バレリーナを目指すトランスジェンダーの少女・ララの物語
7月5日より公開されたベルギー映画
「Girl/ガール」が反響を呼んでいる。トランスジェンダーである少女・ララが自身の性と向き合いながらもバレリーナになるという夢を追いかける日々を描いた作品である。
トランスジェンダーの持つ苦しみを精神面・身体面それぞれにおいて丁寧かつ詳細に描写したこの作品は、衝撃と共に、観る者に圧倒的な後味を残す。昨年度アカデミー賞で、外国語映画賞を獲得した作品だ。
LGBTという言葉が当たり前に聞こえるようになった今、LGBTを理解しよう、知っていこうという社会の風向きを感じることは多い。しかし一方で、LGBTの人たちをマイノリティと捉え、「向こう側の人間」のような感覚を持っている人も多いのではないだろうか。または、無意識的ではあっても、上から目線な姿勢で「理解しよう」と思ってしまっている人もいるのではないだろうか。私は、この映画を観て、LGBTについて「理解」しようとしていたことに恥ずかしさを覚えた。
主人公であるララは15歳。性自認は女性であるが、身体は男性という、トランスジェンダーだ。バレリーナになるという夢を叶えるため、「女性」としてバレエスクールに通い厳しいレッスンを重ねるが、その日々は、精神的にも肉体的にも追い詰められるものだった。
ララは、レオタードを着用した時に目立たないように、毎日男性器をテープで貼り、抑えつける。厳しいレッスン中にも水分を摂ろうとしない。股間に貼り付けたテープの取り外しは容易ではなく、すぐにトイレに行くことは難しいためだ。
また、滝のように汗をかいていても、女子生徒と一緒にシャワーを浴びることはしない。思春期の女子生徒は「なぜ一緒にシャワーを浴びないの?」と無邪気に声を掛ける。毎日ひっそりと股間にテープを貼って剥がすララの苦しみと、テープのせいで真っ赤になり炎症を起こしてしまった男性器の存在なんて、予想がつくはずもないのだ。