八丁味噌、柿の葉ずし……発酵食が物語る日本の歴史と食文化
納豆やイカの塩辛、漬物などの発酵食は、日本人の食生活に欠かせないものだ。発酵食は昔から、日本人の食文化に深く関わっており、土地によって様々な発酵文化が根付いている。
小倉ヒラク氏は「発酵デザイナー」として、発酵にまつわる目から鱗の事実を可視化し、醸造学や文化人類学の視点から、日本全国の発酵文化を研究している。
同氏の新著『日本発酵紀行』(D&DEPARTMENT PROJECT刊)の刊行を記念したトークイベントが8月10日にみたかのば(三鷹市)で開催された。発酵と人々の営みには、どんな密接な関係があるのか。
小倉氏が8か月間、日本全国の発酵文化を追いかけた中で感じた、日本の歴史や当時を生き抜いた人々の暮らしぶりについて語った。
冒頭では、著書『日本発酵紀行』を出した背景と、47都道府県を巡るフィールドワークを通じて得たことについて話した。
「本の中で取り上げた発酵食は、県同士が被らないように世間にあまり知られていないものを扱った。また、その土地に根付いて3代に渡って受け継がれている発酵食を厳選。物産カタログを作りたかったわけではなく、その土地の起伏や何百年にも渡るストーリーを紐解き、発酵から日本のローカルや歴史を再発見するきっかけになればと。こうした想いから日本全国を渡り歩いた」(小倉氏)
発酵食には、その土地が歩んできた歴史や、味覚、暮らしぶりが如実に現れる。まさに記憶のアーカイブとして、発酵文化が日本を再発見する手がかりになることを小倉氏は説いた。
多種多様な発酵食が全国津々浦々に散りばめられている中、トークイベントでは特徴的なものを抜粋。歴史的な背景や興味深い事実について話を展開した。
東海地区発祥の発酵食として名の知られている八丁味噌。愛知県の岡崎地区にある、岡崎城から八丁(約870m)離れた場所で味噌蔵を始めたことがきっかけになっているという。
「八丁味噌が今もなお、親しまれているのは、2つの老舗の味噌蔵が関係している。旧東海道を挟んで450年続くカクキューと600年続くまるや。表立てはライバル視しているものの、裏ではお互いが助け合い、八丁味噌の味や伝統を守り抜いてきた」
徳川家が愛したとされる八丁味噌。麹(こうじ)と大豆を混ぜないという変わった作り方になっているが、実は中国や韓国から伝わった大陸型の製法が、今でも色濃く残っている稀有な例なのだという。また、味についても普通の味噌と違い、苦味やえぐみが強い。
「愛知東海地方は、他県に比べ独特な味覚を持っている。美味しさという観点ではマイノリティだが、そこには民族性があることに気づいた。愛知東海地区にある醤油蔵や味噌蔵は、手間をかけてイチから作っているところが多い。このような歴史的な背景から、独特の調味料文化が根付いていった」
発酵文化が日本を再発見する手がかりになる
愛知県・岡崎地区発祥の八丁味噌
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『日本発酵紀行』小倉ヒラク著
D&DEPARTMENT刊/1,800円/ISBN 978-4-903097-63-3
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