不信任案を出されたジュゼッペ・コンテ伊首相
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イタリアは1990年から現在までまともに経済が成長したことがなく、2009、2012、2013とマイナス成長だ。しかも負債はGDP133%という状態にある。その根底にある銀行の再編は一向に進んでいない。(参照:「
Datosmarco」、「
Clarin」)
また長期政権がないことから政策の実行に移すことも容易ではない。イタリアのジュゼッペ・コンテは戦後66代目の首相である。イタリアで首相が長期政権を維持することはほぼ奇跡だとという証である。
そして、コンテ首相もイタリアのこの伝統を踏襲することになりそうだ。五つ星運動と同盟の連立政権の後者の党首、マッテオ・サルビニ内相(46)が今後の政権維持を否定して同党が今月9日、コンテ首相に対して内閣不信任案を提出したからだ。サルビニの狙いは早急なる総選挙の実施である。そして、自らが首相になることだ。
現在の同盟の支持率は36%以上で、それに同じ右派の2政党フォルツァ・イタリアとイタリア同胞の支持率を合わせると50%以上の支持率を確保できる。実際、この3政党は地方政治で連携している。一方の五つ星運動は17%、そして支持率を回復しているレンツィー前首相の民主党は20.5%しかなく、両党を合わせても40%に満たない。しかも、民主党は10日、コンテ首相が内閣不信任案を切り抜けるための支援はしないと発表した。(参照:「
El Independiente」)
五つ星運動と同盟の政権が誕生したのは昨年3月4日の総選挙あとの6月1日であった。僅か14カ月の政権がまもなく崩壊することになる。もともとこの両党の連立政権は水と油を合わせた政権で長期間政権を維持することなど不可能であった。あたかも二つの政権が同時に存在しているようなものである。
極右政党である同盟の党首サルビニは若いが政界で20余年活躍して来たつわものである。一方の五つ星運動は民衆の不満を支えにして2009年にコメディアンのグリッロと一部政治活動家によって設立されたポピュリズム政党で、党首で副首相のルイジ・ディマイオ(33)を始め、政治家としたら「アマチュア集団」と言える。この二人の党首を比較しても、政治プロのサルビニが政治アマのルイジ・ディマイオを凌ぐのは当然の成り行きであった。それを皮肉って、一部イタリア紙は「サルビニが五つ星運動を食ってしまった」「サルビニは五つ星運動のリーダー」といった表現を使っているそうだ。(参照:「
La Razon」)
しかも、両者の上にお飾り的に据えられたコンテ首相は法学部の学者でしかない。これまで政治家としての経験はなくサルビニの傲慢な動きを止めるだけの力量はない。