イタリアの連立政権崩壊、時間の問題に。極右の「同盟」政権取得の可能性も

ジュゼッペ・コンテ首相

不信任案を出されたジュゼッペ・コンテ伊首相
photo by European Union 2019 via flickr(CC-BY-4.0)

「長期政権維持は奇跡」というイタリア

 イタリアは1990年から現在までまともに経済が成長したことがなく、2009、2012、2013とマイナス成長だ。しかも負債はGDP133%という状態にある。その根底にある銀行の再編は一向に進んでいない。(参照:「Datosmarco」、「Clarin」)  また長期政権がないことから政策の実行に移すことも容易ではない。イタリアのジュゼッペ・コンテは戦後66代目の首相である。イタリアで首相が長期政権を維持することはほぼ奇跡だとという証である。  そして、コンテ首相もイタリアのこの伝統を踏襲することになりそうだ。五つ星運動と同盟の連立政権の後者の党首、マッテオ・サルビニ内相(46)が今後の政権維持を否定して同党が今月9日、コンテ首相に対して内閣不信任案を提出したからだ。サルビニの狙いは早急なる総選挙の実施である。そして、自らが首相になることだ。

五つ星運動の脱落で「極右政権」の可能性も

 現在の同盟の支持率は36%以上で、それに同じ右派の2政党フォルツァ・イタリアとイタリア同胞の支持率を合わせると50%以上の支持率を確保できる。実際、この3政党は地方政治で連携している。一方の五つ星運動は17%、そして支持率を回復しているレンツィー前首相の民主党は20.5%しかなく、両党を合わせても40%に満たない。しかも、民主党は10日、コンテ首相が内閣不信任案を切り抜けるための支援はしないと発表した。(参照:「El Independiente」)  五つ星運動と同盟の政権が誕生したのは昨年3月4日の総選挙あとの6月1日であった。僅か14カ月の政権がまもなく崩壊することになる。もともとこの両党の連立政権は水と油を合わせた政権で長期間政権を維持することなど不可能であった。あたかも二つの政権が同時に存在しているようなものである。  極右政党である同盟の党首サルビニは若いが政界で20余年活躍して来たつわものである。一方の五つ星運動は民衆の不満を支えにして2009年にコメディアンのグリッロと一部政治活動家によって設立されたポピュリズム政党で、党首で副首相のルイジ・ディマイオ(33)を始め、政治家としたら「アマチュア集団」と言える。この二人の党首を比較しても、政治プロのサルビニが政治アマのルイジ・ディマイオを凌ぐのは当然の成り行きであった。それを皮肉って、一部イタリア紙は「サルビニが五つ星運動を食ってしまった」「サルビニは五つ星運動のリーダー」といった表現を使っているそうだ。(参照:「La Razon」)  しかも、両者の上にお飾り的に据えられたコンテ首相は法学部の学者でしかない。これまで政治家としての経験はなくサルビニの傲慢な動きを止めるだけの力量はない。
次のページ
五つ星支持の急落。しかしコンテ首相は人気上昇!?
1
2
3
ハッシュタグ
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会