イタリアの連立政権崩壊、時間の問題に。極右の「同盟」政権取得の可能性も

支持急落の五つ星だが、コンテ首相は人気上昇

 ところが、独断的なサルビニを前に、温厚で常に対話で両党の軋轢を解消させよう務めているコンテ首相の人気が最近次第に上昇しており、五つ星運動の将来のリーダーにさせようとする動きも生まれている。もともと、コンテは五つ星の推奨で首相になった人物だ。  とはいえ、この14カ月の連立政権で五つ星運動は国民からの支持を失ってしまっている。民衆の不満を代弁して政治の腐敗や現政治体制を批判し、そして理論でその為の解決策を国民の前に披露しても、政治経験がゼロであったために、実際に政権に就くと外野席から批判するのと実際に政権に就いて政治を行うことの違いのギャップの前に右往左往するだけであった。  閣僚会議でも批判はするが実行力が乏しい。この14カ月の政権運営の中で国民は五つ星運動にそれを観たのである。それが支持率の急激な降下に現れている。前回の総選挙で32.5%の支持票を獲得したのが、今では17%にまで下がっている。その失った支持率は同盟と民主党に流れていると推測されている。

現政権打倒を急ぐサルビニの思惑

 運輸次官でサルビニの経済顧問を務めているアルマンド・シリが汚職容疑にかけられ、それに対して五つ星のリーダー、ルイジ・ディマイオは辞任を要求している。また、ロシアから同盟が資金を受け取ったという疑惑についても調査が進められているが明白になるまでまだ時間がかかりそうだ。これらの疑惑が明確にされる前のまだ同盟への高い支持率が継続している間に現政権を打倒して自らが首相に就くというのがサルビニのプランである。  その発火点となったのが8月7日の上院の審議でイタリアのトリノとフランスのリヨンを結ぶ高速列車の建設に五つ星運動が反対票を投じたことであった。嘗て北部同盟と呼んでいた同盟にとって、この高速鉄道の建設はイタリア北部を発展させる重要な要となる。五つ星運動は当初からその高額な建設費用と環境保護という面からこの高速列車の建設には反対していた。  この投票結果の直ぐあとにサルビニはコンテと会談し、前者は後者に五つ星運動の3人の閣僚の辞任を要求した。ダニロ・トニネリ運輸相、エリザベタ・トレンタ国防相そしてジョバンニ・トゥリア経済相の3人である。辞任を要求した理由はトニネリはトリノとリヨンを結ぶ高速列車の建設を阻止しようとした、トレンタは地中海をコントロールするプランの障害になっている、トゥリアは欧州委員会と協調し過ぎる、ということからだとした。しかし、辞任させるのは難しく、またコンテが辞表を提出する様子もないと見たサルビニは内閣不信任案を提出することを決めたのである。(参照:「ABC」)  それに対してコンテ首相は翌日8日にテレビを通して政府内で起きていることを明らかにし、その全ての責任はサルビニ内相にあるとして厳しく彼を批判したのである。  そのテレビでの説明の中で、コンテは政府の改革を国民の前に約束したことを突如中断させることにした理由をサルビニは説明する必要があると訴えたのであった。
次のページ
サルビニvsコンテ、闘争の決着は……
1
2
3
ハッシュタグ
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会