江戸川区のスーパー堤防、完成までに200年、2.7兆円をかけて9万人が立ち退き!?

一部しか完成していないスーパー堤防でも「効果がある」と東京高裁・都築裁判長

入廷行動

2019年7月16日、入廷する原告住民ら。左から2番目が高橋新一さん。中央が母の喜子さん

 今回の東京高裁での控訴審でも住民側は敗訴した。しかし、都築政則裁判長が読み上げた判決文のなかで、筆者が「おかしい」と思った表現がある。 「地球温暖化の影響等も考慮すれば、超過洪水が発生し、(従来の)堤防が決壊する可能性は否定できない」というものだ。裁判所は本当に、地球温暖化と洪水の関係性を小岩1丁目において熟慮したのだろうか? 
スーパー堤防はごく一部

江戸川区のスーパー堤防はごく一部に作られるだけ。すると洪水時は図のようにスーパー堤防の両脇の地域が浸水することになるが、裁判所はそれでも「効果がある」と断定した(反対住民作成の資料より)

 また、堤防は一直線につながって、初めて堤防の役目を果たすものだ。一部だけが完成しても意味がない。だが都築裁判長は、小岩1丁目という一角にだけスーパー堤防を造成することに関しても「効果がある」と断じた。  傍聴席で筆者の隣に座っていた水問題の専門家は「あり得ない」と口にしていた。原告側の小島延男弁護士は「ひどい判決だ」と振り返り、おそらく上告をするものと思われる。高橋さんらは「これは小岩1丁目だけの問題ではない。もう少し頑張らねばなりません」と言葉を締めた。 <文・写真/樫田秀樹>
かしだひでき●Twitter ID:@kashidahideki。フリージャーナリスト。社会問題や環境問題、リニア中央新幹線などを精力的に取材している。『悪夢の超特急 リニア中央新幹線』(旬報社)で2015年度JCJ(日本ジャーナリスト会議)賞を受賞。
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