ICRPが原発事故後の放射線防護に関する勧告をアップデート中。一般住民の被ばくを減らす改定が行われる模様

帰宅困難地域

kazu / PIXTA(ピクスタ)

 放射線防護の分野で世界的な影響力を持つ ICRP(国際放射線防護委員会)が、原子力災害時の放射線防護指針をまとめた独自の勧告をアップデートしようとしている。どうやらこのアップデートには、原発事故被災者たちの被ばくを以前より少なく抑える方向の改定が含まれるようである。この改定は将来、日本の避難基準や帰還基準を変えることになるかもしれない。

原子力災害時のためのICRP勧告、Publication 109 と 111

 ICRPの現行の勧告のうち、原子力災害時の放射線防護を主題にしているのは「Publication 109」と「Publication 111」である。この2つの勧告はペアをなすものであり、「109」では、災害の発生直後からの“緊急期”における放射線防護が、そして「111」では、緊急期の後に長く長く続く“復興期”における放射線防護が論じられている。  これらの勧告は2009年に出版された比較的新しいものであるが、1986年に発生したチェルノブイリ原発事故(旧ソ連、ウクライナ)と、1987年に発生した放射線源事故(ブラジル、ゴイアニア市)までの経験をもとにして書かれているため、2011年3月に福島第一原発事故が発生して以降は、日本での経験や教訓を反映させるアップデートが求められるようになっていた (参考資料: ICRP and FukushimaRadiological protection issues arising during and after the Fukushima nuclear reactor accident)。

アップデートを担う作業部会 Task Group 93

 こういった背景から、2013年の秋にはICRP内に勧告「109」と「111」の更新を担う作業部会(Task Group 93 )が立ち上げられ、ICRP主委員会(ICRP Main Commission)からの承認を経て、活動を開始した(参照:ICRP Committee 4 Meeting )。  同作業部会は、ICRP 内外の研究者ら 10 名から成る国際チームであり、座長には甲斐倫明教授(大分県立看護科学大学)が、副座長には本間俊充氏(原子力規制庁。旧所属は日本原子力研究開発機構 安全研究センター)が就いた。
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アップデート版の草稿から何が見えてくるか?
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