毎日が北海道物産展!?――「日常のドラッグストア」ではなく「非日常」をウリにした成功例も
そうしたなか、少し異なった戦略で海外展開をおこなっている日系ドラッグストアもある。それは北海道の地場大手ドラッグストア
「サッポロドラッグストア」(以下「サツドラ」、札幌市)だ。サツドラは2015年にマレーシアに、2017年に台湾に出店。台湾では店舗網を伸ばしており、8月現在6店舗を構える。
同社がウリにするのは、地元の同業他社とは一線を画した「日本」、そして
「北海道」「札幌」ブランド。現在、北海道は台湾や香港など東南アジア諸国において人気の旅行先となっており、現地百貨店の「北海道物産展」にも多くの人が押し掛ける。サツドラは「現地に根付いた品揃え」のみにこだわることなく
「日本の正規商品」と「北海道・札幌ブランドの商品」を前面に押し出すことで人気を集め、「北海道生まれのドラッグストア」として順調に店舗を増やしつつある。ちなみに、同社は千歳空港などにおいて北海道土産などを販売するアンテナショップ「北海道くらし百貨店」を4店舗運営しており、「北海道・札幌ブランドの商品」を売り出すことへのノウハウは十分だ。
サツドラは店舗の9割以上が北海道内にある地域ドラッグストアにすぎない。日本の大手各社とは一味違う「北海道人気にあやかった」戦略により、今後どこまで海外店舗網を増やしていくことができるのか注目される。
台北市で一番の繁華街・西門町に出店するサッポロドラッグストア。
ドラッグストアながら店内では北海道のおみやげも販売されており、「毎日が北海道物産展」といった要素も併せ持つ
また、台湾ではサツドラ以外にも「日本ブランド」を全面的に押し出すことで、急成長を遂げたドラッグストアがある。それが2011年に展開を開始した「
ニチヤクホンポ」(日薬本舗)だ。
サツドラの戦略が「毎日が北海道物産展」であるとすれば、こちらは「毎日が日本物産展」。同社は
台湾資本ながら、「商品の多くが日本の正規商品」であることに加えて、大型店に設置された
「お祭り」「駄菓子」「神社」など日本文化を紹介する売場が話題を呼び、創業から僅か8年で52店舗(7月現在)を構える台湾大手のドラッグストアとなった。
数年前、中国人観光客の「爆買い」によって日本国内の一部ドラッグストアでオムツが品薄状態となったことは記憶に新しいが、現在もこうした日本の薬や衛生関連商品、菓子類などはアジア諸国で大きなブランド力を持つ。ニチヤクホンポの「急成長っぷり」を見るに、まだまだ日本のドラッグストアは海外での成長余地があるといえよう。
日本語で溢れるニチヤクホンポ(日薬本舗)の店内(台湾・高雄市)。大型店には「駄菓子売場」や「神社」など日本文化を紹介する博物館も併設される。
サツドラが「毎日が北海道物産展」ならこちらは「毎日が日本物産展」だ
さて、今回は大手各社の「海外展開」に目を向けたが、次回は再び「日本国内」の話に戻る。
ひとことにドラッグストアといっても「郊外型」と「都心型」ではその品揃えにも大きな差が生じてくる。次回の記事では、ドラッグストアの「立地形態」と「販売品目」の関係性について注目していきたい。
【参考文献】
●孫 維維(2015)「中国におけるドラッグストア研究 : 事例研究 : ワトソンズの成長要因に関する考察」商学研究所報 47(2), p.1-43,巻頭2p.
●デロイトトーマツグループ編(2019)「世界の小売業ランキング2019」デロイトトーマツコンサルティング(同社リリース).
<取材・文・撮影/若杉優貴(都市商業研究所)>