中米グアテマラは、なぜ「安全な第三国」になったのか? トランプの恫喝に従わざるを得ない小国の悩み

メキシコは拒否の姿勢崩さず

 トランプ大統領は前述の署名が交わされた際に、この合意でグアテマラからの移民が農家や牧場で働くことが容易になることを指摘して、「我々はグアテマラ代表と協議した。これからは合法的な形でそれ(入国)が出来る。この合意によってコヨテ(密入国の道先案内人)や密入国斡旋業者は仕事がなくなるはずだ」「彼らは悪人だ。人の不幸を利用して多くのお金を稼いでいる」と述べた。  トランプ大統領はメキシコにも「安全な第三国」を受け入れることを要請したが、現在までメキシコはそれを拒否している。(参照:「El pais」)  メキシコはそれに合意すると米国から送還された移民を保護せねばならなくなる。寧ろ、米国に協力していることを示す為にメキシコ南部の国境地帯に軍隊の派遣を増員させた。この成果があって、この一カ月半で中米からの移民の入国を36%減少させたという。  また、米国の陰になってあまり注目されないが、メキシコはこの5か月間に45000人の不法移民を本国に送還している。それも「安全な第三国」になれば積極的に展開できなくなる。

背景には「トランプの脅し」も

 トランプ大統領は、グアテマラが「安全な第三国」になるための条件を満たすことが出来ないことを承知でグアテマラにそれを受け入れさせた。  つまり、そうしないのであれば輸入関税を挙げるとか言って脅迫したのだ。  トランプの狙いは唯一米国に移民しようとする人たちを減らすことである。その為には隣国を犠牲にしてもそれを達成させることである。  グアテマラからの移民を今後正式に受け入れる代わりに、その数倍の他国の移民を米国はグアテマラに送還しようというわけである。  トランプ大統領が米国大使館をイスラエルのテルアビブからエルサレムに移した時も、その後についてグアテマラ大使館を移したのがモラレス大統領であった。この決定の背後にも米国が今後グアテマラに対し有利な条件を用意してくれるのを望んでいたようである。  しかも、この移転の決定をどの国よりも早く下すということも米国により印象づけることになる。モラレス大統領の耳にチェコが先ず移転の名乗りを挙げる可能性があるということが届いていたという。それで、モラレス大統領は移転の決定を早めたようである。それは同時にイスラエルからの多くの分野で経済そして技術的支援を得るためのものでもあった。  グアテマラのような小国は売国奴とも言えるような外交を展開する必要があるのかもしれない。因みに、グアテマラは台湾と国交を結んでいる僅かの国のひとつである。
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身
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