次に「調身」と「調息」について、それぞれ解説しいこう。
調身
調身という、背筋を伸ばして正しい姿勢をすることは、エイミー・カディ氏の「
パワーポーズ」の概念と近い。自信のあるポーズ(ハイ・パワーポーズ)を行うことで、脳を騙して、闘争心を高める脳内ホルモンを分泌することができるというものだ。昔、笑顔体操という、自分で笑顔を作ると楽しい気分になるものがあった。
【参考記事】⇒
面接やプレゼンの成功率が向上。たった2分でできる「ハイパワーポーズ」とは?
人は不安を感じていると背筋が曲がって、弱い姿勢であるロー・パワーポーズを取ってしまう。そうすると、脳内でも不安な気持ちを起こさせる脳内ホルモンが分泌されてしまう。それが、悪循環となって、どんどん不安な感情が強くなっていくのだ。
そのため、姿勢を正すことで心の状態を整えようとすることは、心理学的に正しい手法だ。
調息
調息という自然な呼吸を行う……。怒りの感情が生まれたときに深呼吸をすると気持ちが落ち着くように、呼吸で心を落ち着かせることは、みなさんも経験があると思う。
大変な仕事が終わったときに「ため息」が出るのも、自律神経が緊張の交感神経から、リラックスの副交感神経に切り替えて体の緊張を解くためだ。緊張や不安などのネガティブな気持ちに支配されたときは、呼吸は乱れてしまう。心の乱れは呼吸の乱れへとつながる。
しかし、これは上記の調身と同じで、乱れた呼吸を意図的に整えることで、乱れた心をも整えることができるのだ。
このように、身体と呼吸を整えることで心を整える、調身+調息=調心というのが、心理学や脳科学的に正しいことはわかっていただけただろうか。思考法やテクニカルな方法で感情をコントロールしようとするよりも、シンプルではないだろうか。
余計な感情に支配されていないクリアな脳から、クリアな思考は生まれる。深い思考を行う必要があるときは、調身+調息を行なってみてはいかがだろうか。
ただ、記事を読んで頭でわかった気になるよりも、ちゃんとお寺に行って体験をしてほしい。畳の軋む音しかしない空間で、ただただ座って呼吸をする時間というのは、神秘的な経験となる。頭で理解していることと、実際の体験がどれだけ異なるかが判るだろう。
筆者が訪れた長谷寺では毎週月曜日に18:30から座禅体験を行なっており、100円で参加させてもらえることができる。私のときは、20人近くが参加していたが、普段はもう少し少なく、かなり参加しやすい雰囲気だ。
ぜひ、夏休みの時間があるときに、普段は体験できない2500年かけて作られた伝統を体験していただきたい。
【参考文献】
『行動意思決定論』M・H・ベイザーマン/D・A・ムーア
『<パワーポーズ>が最高の自分を創る』エイミー・カディ
『坐禅の実際』〜身心一如としての坐禅