生活水準を下げられたなかったために老後貧困に陥るケースは多い
退職後、いわゆる老後。年金暮らしのまま夫婦2人が95歳まで生きるためには、「約2000万円の資金が不足する」という。この金融庁試算をめぐり、怒りの集中砲火、批判的な意見や議論が勃発。
一連の炎上騒動から、「国民の皆さんに誤解や不安を与えた」との謝罪が行われたことは記憶に新しい。
渦中の老後に必要とされる資金。2000万円ともそれ以上とも言われているものだが、差し押さえ・不動産執行の現場では、これらの資産を高齢者から取り上げていくという事例も少なくない。
そんな我々はこの騒動に何を思えば良いのだろうか――。
マンション管理費の長期滞納。この事例で駆り出されることも昨今増えつつある印象だ。
地方都市ながらも徒歩10分以内という駅チカ物件。立地が線路脇のため少々騒音も気になるほどだ。
この一帯では珍しい高層マンション、建造当初のバブル期然とした高級さが打ち出されているのだが、そんなマンション内でも最高級の一室が今回の当該物件。
債務者は70代の男性だった。
「やっぱり買うなら良いものをと思って一番高いのを買ったんだけど、今売ったって3分の1くらいになっちゃうんでしょ?」
当時の収入からも少々背伸びをした“見栄”が購入動機となっているようだが、現状の見積もりも少々甘く、現実的には6分の1程度の価格で落ち着くことになる。
さらに今回は管理費滞納分も割引されての値付けとなるため、10分の1程度となる可能性すらある。
管理費滞納の理由として、以下のような言葉もあった。
「妻が身体を悪くしちゃってね……。それがなければ、こんなのすぐに払っちゃったんだけどさ。趣味の旅行にも連れてってやらなきゃいけないし。介護が無けりゃ支払いも忘れなかったんだけど」
債務者の言葉を鵜呑みにするのは我々の仕事ではない。
「うっかり忘れていた」では済まされない期間の滞納金があるのは明白で、滞納金に課せられる罰則金利から膨れ上がった額だけで200万円ほどの債務を発生させていた。
「住宅ローンも残り数年だし、残額もちょっとなんだよ。すぐ払っちゃうから。どうしても競売だけは止めたいんだよね、世間体的にもアレでしょ?」
言葉はよろしくないが、“この期に及んで”「世間体」を気にするものは少なくない。
また、競売に対する自身への悪影響を気にするものも同様に少なくないのだが、せいぜい残る近隣住民に一定期間の影響を及ぼす程度、本人にはこれといった塁は及ぼないだろう。