イラスト/松嶌篤志
「今年夏場以降、
円キャリートレードのチャンスとなるかもしれません」
そう分析するのは、かつてシティバンクでチーフディーラーとして活躍した西原宏一氏。円キャリートレードは、円を売って金利の高い通貨を買う取引の総称だ。日本の長期金利がマイナス圏を推移している今こそ有効といえる。
「世界の政策金利を見ると、トルコリラの24%を筆頭に6.75%の南アフリカランド、8.25%のメキシコペソなど、新興国の高さが目につきます。ただし、新興国通貨は値動きが激しい。金利だけに目を奪われて、安易に外貨を買っていくとヤケドしやすい」
新興国通貨の高金利はハイリスクの裏返しでもあるためだ。
「円キャリーは’06年頃にも盛り上がりましたがサブプライムショックからリーマンショックへと2度の猛烈な円高が発生し、円キャリーを行っていた個人投資家は大打撃を被りました」
当時、流行したのが豪ドル。7%の高金利で人気を集めた。
「しかし、今のオーストラリアの政策金利は1.5%。今後も利下げが予想されています。円キャリーの対象としては魅力薄。NZドルも同様です」
新興国通貨はハイリスクで、オセアニア通貨は魅力薄、ユーロは日本同様マイナス金利となると、どの通貨に着目すればいいのだろうか。
<継続利上げで米ドルは今や高金利通貨!>トルコや南アフリカ、メキシコの政策金利の高さが際立つが、米国もオーストラリアやニュージーランドを抜いて、新興国に次ぐ高い政策金利を維持していることがわかる 図版/ウエイド
「米ドルでしょう。’15年から断続的に利上げを行い2.5%まで上昇しています。年内にも利下げがあるかもしれませんが、かつてのようにゼロ近辺まで下げる可能性は低い」
一方向に動きやすい新興国通貨と比較して、米ドルの値動きは安定している。新興国通貨よりも低リスクでスワップ金利を狙いやすい通貨と言っていいだろう。かといって、無策で買えば退場は必至。スワップ狙いの投資には綿密な資金管理や、ある程度の相場観が必要なのだ。資金管理については後ほど個人投資家に聞くとして、今後の円相場をプロはどう見ているのか?
「長期的に見ると、『令和の円安』がやってくるかもしれません」
米中貿易戦争の激化や混迷するブレグジットなど、不安材料も多い。リスクオフの円高警戒感が強まるなか、西原氏が注目するのは日本の機関投資家と企業の動向だ。
「平成は円高の時代でした。バブル経済が崩壊した一方、リスクオフで円が買われる場面が増え、景気減速と円高の2つに苦しめられることになりました。この間、米ドル/円は160円から75円まで下落。50%近くも円の価値が上昇したのです。この流れに終止符を打とうとしたのがアベノミクス。相次ぐ金融緩和で一時125円まで円安が進んだのは記憶に新しい。平成開始時点のレートが126円ですから、ほぼ同水準まで戻したわけです」
ところが、アベノミクスが息切れして、直近では円高トレンドへ回帰。今年1月3日には104円台まで円高が進行した。そこから110円まで戻して揉み合いが続いている。