スペイン3大紙のひとつ『ABC』が報じた南米における日中の状況
15日付にて『ABC』にワシントン駐在員としても活躍した経験をもつエミリ・ブラスコが、「ラテンアメリカにおける中国の存在は、日本をより活発に活動するよう追い立てている」という内容の記事を発表した。
その内容の一部を以下に紹介すると共にそれに関係した情報などを記載することにする。
中国に大幅に遅れを取っている日本の対ラテンアメリカ貿易
同氏は、最近10年間の日本のラテンアメリカとの貿易取引は2倍となり、
2018年には600億ドル(6兆4800億円)を越えるまでになったことを指摘した。しかし、その一方で同年度の中国はその
5倍の3000億ドル(32兆4000億円)を達成していることも言及した。
また日本はアルゼンチン、ブラジル、メキシコ、中米におけるプロジェクトに対し国際協力銀行が2018年度は
13億ドル(1400億円)の融資をしていることにも触れている。一方の中国の同年度は
77億ドル(8310億円)を融資をしているが、その中からベネズエラへの原油の買い付けに関係した分50億ドル(5400億円)を差し引くと、実質的に融資として
27億ドル(2910億円)となり、日本のそれを2倍上回っているだけとなると同氏は言及した。
同氏は触れていないが、中国のラテンアメリカにおける2001年から2016年までの累積投資を見る必要がある。ブラジル548億4900万ドル(5兆9230億円)、ペルー123億7200万ドル(1兆3360億円)、アルゼンチン105億8700万ドル(1兆1430億円)、キューバ58億ドル(6260億円)、ジャマイカ49億2700万ドル(5320億円)、チリ33億600万ドル(3630億円)、メキシコ32億1200万ドル(3470億円)となっている。
この総額の前に日本は全く太刀打ちできない。(参照:「
El Pais」)
更にブラスコは、記事の中で、シンクタンク「Diálogo Internacional」のレポートを引いて、この地域における戦略的重要性は中国のグローバル的上昇のリズムに合わて成長したと指摘している。そして、中国がカリブ海を含め各国政府とグローバルな成長という観点から数々の港湾プロジェクトに積極的に乗り出しているということに日本は気づき、日本の船のこの地域における航海の自由を確かなものにする必要性を感じているとしている。
関心ある地域に国家元首が訪問することは相互の関係伸展に直接の関係はないとされながらも、安倍首相がラテンアメリカを最初に訪問したのは
2014年の5か国と、2018年のG20ブエノスアイレスを訪問した2度だけである。一方の中国の習主席はG20を含めると4度ラテンアメリカを訪問している。
中国は習主席以外にも首相や外相らが交代でラテンアメリカを訪問している。そのような外交は日本はこれまで実現させていない。
首脳の訪問、そして前述した累積投資などの影響から、2015年1月にはラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)とのフォーラムを北京で開催できるまでになった。この組織は中南米の全て33か国が参加して2011年に発足させたもの。発足した当初は中国からの影響はなかった。僅か4年後に北京でフォーラムを開催したということは中国のラテンアメリカでの政治的そして経済的な影響力の伸展を如実に示すものである。(参照:「
Hispan TV」)