誰でもVTuberを可能にした「カスタムキャスト」を通じてみた「VR」の課題

当初目指していたのは<メイドさんになろう>!?

 もともと『カスタムキャスト』は「ニコニコ動画」で知られるドワンゴと開発企業のS-courtの共同で実現したものだった。 「当時は、一旦ローンチしてから詰めていこうとと考えていて、最初からどかーんと大きく上手くやるつもりはなかったんです」  S-court代表のYamato氏は10か月ほど前の出来事をそう振り返る。  Yamato氏自身は「バーチャルYouTuberには決して明るくない」という。ただこの開発自体は、ドワンゴと組む以前、既に2015年頃から自社で独自に取り組んでいた。その成果をリリースするに至らなかったのは、数年前のスマートフォンの性能では十分に動作させることが困難だったからだという。  それが数年の間を経てスマートフォンの性能が進歩した。もともと温めていた構想に加え、社内でもバーチャルYouTuberの技術開発を進めていたことで、同様のアプリを計画してた他社よりも早くベストな時期にリリースをすることができたのだ。  ただ、結果的にアバターをつくって配信をすることができるアプリとしてヒットを飛ばしているがYamato氏の開発の動機はそこではなかった。  ドワンゴが商機を見いだしていたのは、バーチャルYouTuberになって配信をすること。しかし、一方のYamato氏の目指していたものは、こうだ。 「自分たちは<メイドさんになろう>というツールを開発したくてスタートしていたんです。だから見ている世界は当初は違っていたんです」  結果的には、それがうまく融合した。リリースから数日後、社内で会議をしているとタレントの最上もがが『カスタムキャスト』を使って配信していると社員が知らせてきた。てっきり製品のプロモーションかと思ったら、そうではなくて余計に驚いた。それくらいに訴求力があった。そこまでの評価されるアプリになったのは、どこから発注されるでもなく早い時期から「メイドさんになろう」と開発を進めていたこと。そして、さらなる技術の蓄積があったからだ。

「アダルトゲーム」で培われた技術

『カスタムキャスト』のベースとなっているのは、Yamato氏が携わる、もう一つの企業であるKISSが制作・販売する『カスタムオーダーメイド3D2』というゲームだ。
カスタムオーダーメイド3D2

カスタムオーダーメイド3D2

 『カスタムオーダーメイド3D2』は18禁と表示されて販売されているアダルトゲーム……俗に「エロゲー」と呼称されるジャンルのゲームである。  このゲームがどういうものかといえば、『カスタムキャスト』でユーザーが楽しんでいるアバターのカスタマイズの部分を、さらに細かくカスタマイズすることができて、服を脱がせたりお色気シーンを楽しんだりできるものである。  ネットで『カスタムオーダーメイド3D2』を検索すると大勢のユーザーが、自分のつくったメイドを自慢したり、スクリーンショットを褒め合ったりしているのを見つけることができる。  Yamato氏は、自分たちの軸足はあくまでこちらのほうにあるという。  Yamato氏がそう語るのも無理はない。このゲームの歴史は長く、強固な市場が存在しているのだ。  1999年のKISSブランドの立ち上げ当初から、キャラクターをカスタマイズすることができる機能は存在していた。2011年に、シリーズ最初の作品である『カスタムメイド3D』が発売され、その後、2015年に『カスタムメイド3D2』、2018年に『カスタムオーダーメイド3D2』が発売されて現在に至っている。この間に近年では、毎月、新たなキャラクター(追加性格と呼ばれる)などの新要素がダウンロード販売されている。こうして強固に培われたベースの部分が、時代の流れと合致したことで、数十人規模の会社を運営し、先を見越した開発を行うことができるほどの市場が存在しているのだ。  さらに特筆すべきは、男性向けのゲームなのに女性ユーザーの数も多いことだ。アプリである『カスタムキャスト』の男女比は6:4程度。ゲームのほうも10%程度は女性ユーザーとみられている。
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早くから注目していたVR機能。しかし……
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