大村入管に収容されたナイジェリア人の“謎の死”。死因も経緯も明かされず

入管庁長官はサニーさんの死については語らず

 7月17日、出入国在留管理庁(入管庁)の佐々木聖子長官による記者会見が日本記者クラブで行われた。「このタイミングでの会見ということは、サニーさんの死亡の件に触れるのか?」と思ったが、4月の改正法施行で導入された新制度の概要や運用状況、支援体制について語っただけだった。  記者の「長期収容、ハンスト、訴訟が起きている。それについて改善を考えているのか?」との質問に、佐々木長官はこう答えた。 「法律的に退去が決まっているのだから、積極的に帰るご準備をしていただければ、明日にも出られる性質のものです。長期収容が非常に問題だとの認識は非常に強く持っている。送還を迅速に行い、長期収容は解消したいというのが入管の基本的な考えです。  収容に耐えられないような健康状態であれば、総合的な判断により仮放免を行い、そうした状態を避けていく、問題を予防していく、事故の発生を未然に防いでいく。そういうことはやらないといけないと思っています(一部抜粋)」

被収容者「(収容施設は)日本でいちばん汚いところです」

解放されたフセインさんとその家族

解放されたフセインさんとその家族

 7月18日、収容によるストレスから食事がとれなくなっていたクルド人のフセイン・イシリさんが、東京入管から1年8か月ぶりの解放となった。フセインさんはこの収容生活が原因で24kg痩せってしまったという。 「みなさんの知っている通り、私は入管に苦しめられました。収容された日、奥さんと連絡を取りたいと言ったら、たくさんの職員に抑え込まれ腕をひねられました。日々、精神状態がおかしくなり、パニックを起こせば職員に腕をひねられ、懲罰の部屋に連れて行かれました。入ったときは元気で、出てきたときは精神を病んでいた。ここは日本でいちばん汚いところです」  若干の怒りを込めて記者たちの質問に答えたフセインさんは、「まだ、3年収容されていて、食事をしていない人がいます」と、まだ解放されていない被収容者のことを心配した。  フセインさんは生きて家族との統合を果たすことができた。日本人の支援者たちに「ありがとうございました」と丁寧に感謝の気持ちを述べ、奥さんの表情もいつもよりずっと明るかった。しかし、まだまだフセインさんのような境遇の人たちは、きりがないほどたくさんいる。  そして、サニーさんのように助からないケースもある。死因はハンストによるものだったのか、そうではなかったのか、謎は残されている。しかし、入管による長期収容が彼に死をもたらしたことは、疑いようのない事実だ。入管は1日も早くサニーさんの死の経緯説明を行い、誠実に真実を述べていただきたい。 <文・写真/織田朝日>
おだあさひ●Twitter ID:@freeasahi。外国人支援団体「編む夢企画」主宰。著書に『となりの難民――日本が認めない99%の人たちのSOS』(旬報社)など。入管収容所の実態をマンガで描いた『ある日の入管』(扶桑社)を2月28日に上梓。
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