ところが、家裁は、夫婦の問題と親子の問題は別の問題として、面前DV・モラの事例でも、強力に面会交流を推進する。弁護士が、友田医師の論文を提出しても、家裁は、頑強に見解を変えず、別居後の母親に対して、面会交流の実施を執拗に迫る。
面前DV・モラがあった事例で、妻が面会を拒否した事案につき、家裁調査官による妻の意向調査が行われた。面会交流実施に向けた圧迫面接である。私が代理人として、面前DV・モラで子が傷ついていることを説明したところ、調査官は、「センセイも、家裁の方針はご存知ですよね」と述べた。
子の精神状態を確認するため、私は、この1か月間に限っても、数人の精神科医、臨床心理士から話を聞いている。精神科医、臨床心理士らは、一様に、最近の家裁の面会原理主義(事案内容を問わず、面会を強要する姿勢)に憤り、心配している。
ある臨床心理士は、彼の詳細で専門的な意見(子が父の面前モラによるPTSDであり面会は有害である)が家裁に無視されたことに驚き、憤慨していた。
面前DV・モラは、心身の成長を阻害する。発達障害や引きこもりを引き起こすことも少なくない。子の一生を左右するのである。他方、防御機能からか、モラ夫に同調し、母をディスり、暴力を振るうミニモラ息子、ミニモラ娘もいる。
そして、脳に損傷を起こすのは、子だけではない。多くの被害妻たちは、被害を受けていた当時のことをよく思い出せない。別居してからも記憶力の減退が続く。視覚野が萎縮していることが強く疑われるのである。ある妻は、記憶力の減退に疑問を持ち、実際に検査したところ、脳と頭蓋骨に隙間(=脳萎縮)が発見された。
家裁の面会原理主義におされ、別居、離婚後に面会交流を実施している被害妻は多い。父に対して、恐怖を抱く子どもたちは、
「どうしてもパパと会わなきゃダメなの」と抵抗する。家裁の命令がある以上、被害妻に選択肢はない。
「ママが一緒でなければ嫌」と子に言われ、モラ夫への恐怖を押し殺して、面会に同席する被害妻もいる。
冒頭の事例は、その後、間接的面会交流(実際の面会を行わない、手紙や成長記録の報告、スカイプなどによる面会)を行うことで決着した。しかし、1年以内に直接的面会交流を行う旨の調停条項を呑まされた。
家裁は、モラの猛毒を軽視している。家裁の意識改革が是非とも必要である。