元東電・賠償担当者からみた、山本太郎氏らに向けられた「放射脳」という“風評被害”

「国が安全だというのに、なぜ風評被害を煽るのか」という批判

山本太郎福島

7月18日、福島駅東口で街頭演説を行った山本太郎氏(れいわ新選組YouTubeより)

 7月21日に行われた参議院選挙に、れいわ新選組を率いて立候補した山本太郎氏。れいわ新選組には、北朝鮮拉致被害者の蓮池薫氏の兄で、元東京電力社員の蓮池透氏も参加、立候補していたが、特定枠から木村英子氏、舩後靖彦氏の2名が当選。代表の山本太郎氏は落選者史上最高得票を集めながらも落選、次の衆院選を目指すことを明らかにした。  そんな山本氏だが、一連の選挙活動を通じてネット上などで「放射脳」と言われ、選挙活動の場においても「真面目にやっている被災者がいるのに邪魔をするな。放射能汚染については国が安全だというのに、なぜ風評被害を煽ることを言うのか」という批判の声もあがっていた。

食の安全基準が、原発事故後は「核のゴミ」レベルまで上がった

一井表 彼らはなぜ「放射脳」と呼ばれるようになったのだろうか。それは、「食の安全基準」が大いに関連している。  2011年3月11日の福島第一原発事故発生前において、原発作業時の防護服などに付着した放射性物質については、100ベクレル/Kg以上になれば「低レベル放射性廃棄物」。つまり「核のゴミ」として厳重に管理しなければならなかった。  しかし、原発事故後は野菜や魚肉類などは100ベクレル/Kgまでが食品流通の基準となり、市場に流通している。簡単に言えば、原発事故前には「核のゴミ」だった基準が現在の食品流通基準になっているということになる。  加えて大手メディアが「風評被害」「食べて応援」と煽っていた福島第一原発事故後の約1年間は、食品の流通基準は500ベクレル/Kgまでとなっていた。  つまり、原発事故前に「核のゴミ」として定められていた基準の5倍までの汚染なら“安全”とされ、市場には100ベクレル/Kgを超える食品も多く流通していたことになる。しかし、大手メディアは原発事故による汚染の実害を「風評被害」として喧伝した。そのため、「食べて応援」することが復興支援になると信じた人たちも多くいたのである。  原発事故前の「核のゴミ」の5倍までの汚染物質を「食べて応援」させようとしてきたことは、冷静に考えれば狂気の沙汰としか思えない。しかし、大手メディアにより創られてしまった“第2の安全神話”に気がつかない人たちからすれば、その危険性を指摘する人こそ“異常”であり、復興支援を妨げたり、デマを流したりする「放射脳」だと揶揄したくなってしまうのだろう。
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「放射脳」呼ばわりを承知で弱者の側に立つ
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