元東電・賠償担当者からみた、山本太郎氏らに向けられた「放射脳」という“風評被害”

山本候補が被曝の問題を訴え続けてきたことの意義

一井表2「放射脳」デマ屋として復興支援を妨げている、という強い印象を持たれている山本氏だが、別の見方をすれば原発利権側にとってはタブーとされる問題に踏み込んできた人物でもある。何度も国政の場で、年間被曝量の観点から健康上の問題がないかを問い続けてきた。そのことの意義は大きい。  山本氏は、事故前までは年間1mSV(ミリシーベルト)以下に抑えるという目標であったにも関わらず、子どもや妊婦も含めて年間20mSV(ミリシーベルト)までは安全とする政府の判断基準は、見直しが必要ではないかと主張している。  山本氏と日本政府の主張のどちらが正しいかについては、議論をすれば並行線をたどるものである。しかし、チェルノブイリ原発事故時のウクライナ政府の基準では、年間5mSV以上は強制移住となり、また1~5mSVでは移住の権利が与えられている。それを考慮すれば、確かに日本政府の被曝許容基準はゆるいとしか言いようがない。  放射性物質を取り込むことによる内部被曝の影響、つまり病気の発症についてはまだわかっていないのが現状だ。因果関係は不明ではあるが、予防原則に反しているとして山本氏が疑義を唱えていることは、電力会社の社員だった筆者から見ても評価に値するものである。

「放射脳」と言われることを承知のうえで弱者の側に立っている

蓮池福島 山本氏は、知識を持たない一般大衆から「放射脳」デマ屋と批判されることを承知しながらも行動を続けてきているように見える。日本のゆるい基準や放射能汚染の実害に怯えて、自力避難した原発事故被災者たち。彼らと接することで、不条理に気がついた者として弱者の声を代弁していると考えられる。  何をもって「安全」とするかが不明瞭でダブルスタンダードとしか思えない安全基準のなかで「原発周辺住民が本当に、健康上何も影響を受けずに暮らせるのか」ということを、信念を持って問い続けてきたという姿勢が山本氏には伺える。そのことも、異常に被曝を気にしすぎると言われ「放射脳」とバカにされる人たちから、熱い支持を得られる要因であろう。
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「対話しよう」という姿勢
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