増加傾向止まらぬ中国からの訪朝観光客。その背景とは?

板門店

観光客が集中する板門店は8割が中国人客(2019年5月撮影)

増加傾向止まらぬ北朝鮮への中国人観光客

 中国人訪朝者が2019年激増している。中朝関係が突然好転した昨年と比べても1.5倍ペースで増え続けている。中国人旅行者が北朝鮮にとって貴重な外貨8億5000万円以上をもたらそうとしている。  以前にも本サイトでお伝えした通り、丹東発の国際列車の切符はローカル旅行会社に買い占められており、丹東の旅行代理店によると、7月から10月中旬までは、平壌へ向かう国際列車は連日ほぼ満席状態だそうだ。(参照:“北朝鮮、6月3日からマスゲーム開始。中国人訪朝者急増で外国人訪朝者にさまざまな余波”|HBOL)  中国人が年間どのくらい訪朝しているかは中国政府も明確な統計は出していないものの推計10万人前後とされる。つまり、今年は13から15万人ほどの中国人が北朝鮮を訪れると思われる。この人数はパスポートを使わず国内旅行扱いで渡航できる新義州や羅先などは含まない人数となる。  今年のゴールデンウィーク連休に訪朝した日本人旅行者は、平壌も板門店も中国人観光客で溢れていたと感想を漏らしているほどだ。  今年の中国人訪朝者にはこれまでにはない傾向が見られる。それは、社員旅行や研修など会社の活動の一環として訪朝する中国人が増えていることだ。この新しい傾向は何を意味しているのだろうか。

企業活動としての訪朝増加の背景とは?

 中国政府は、個人旅行も社員旅行もあくまで民間人の自由意志によって選択されているものなので中国政府は一切関知していないというスタンスを国外へ繰り返しアピールしている。  しかし、この中国人激増の背景には中国政府の意向を汲み取った忖度が働いているのではないかと見られる。  丹東で北朝鮮旅行手配をする旅行会社のツアー内容を見ると、3泊4日往復国際列車の旅行で、1人2580元(約4万5000円)で募集している。日本人や他の外国人はこの価格では参加できない。日本人だと30人とか大人数を集めたなら別だが、この3倍以上の旅費がかかる。  というわけで中国人は元々他の外国人と比べても優遇されているわけだが、果たして中国人はこの価格でも我先に北朝鮮へ行くのだろうかという疑問が残る。 「ツアー参加者は上海より南の人たちが多く、丹東や瀋陽旅行などもパッケージにして販売しています」(丹東の旅行会社担当者)  各旅行会社は、募集している価格より特に値引きはしていないと主張しているものの、たとえば、上海発であれば、2580元もあれば、タイやマレーシアツアーなどへ参加してもお釣りが出るくらいの団体旅行が売られている。同じくらいの旅費の北朝鮮をわざわざ選ぶだろうか。
丸ごと果物や野菜

丸ごと果物や野菜は中国人必須アイテム(板門店へ向かう途中の休憩エリア・5月撮影)

 というのも一般的な中国人の旅行目的は、まずショッピング。続いて、美味しいものを食べることにある。世界遺産観光や自然探索などの目的はぐっと低い。北朝鮮は、中国人が爆買いするような物があるとは思えないし、食事も肉重視の食事を好む中国人には、薄味で肉も少なくて物足りないと感じるのではなかろうか。つまり、北朝鮮旅行が中国人の旅のニーズを満たしているとはまったく思えないからだ。  そこで考えられるのが、表面的な旅費はそのままに中国政府が何かしらの支援をして「北朝鮮旅行を促進している」のではないかということだ。
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