前項におけるアンケート結果を公表しているのは業界団体の日遊協である。パチンコには「換金」が付き物であるということは周知の事実であるが、それを公言出来ないのも百も承知。この日遊協のアンケート結果をたたき台にして仮説を立ててみる。
仮に20代男女(ファン限定)のパチンコの月間使用金額の平均を6万円とする。
一般的にパチンコの還元率は80%前後と言われていることから、平均の「換金額」は4万8000円となり、これを差し引けば平均の使用金額は月間1万2000円程度となる。月間6万円ではなく、月間1万2000円の遊興費であれば、まああり得ない金額でもなく、その程度の金額をスマホゲームに投じる層も一定数は見込める。
スマホゲームユーザーの課金実態については、調査結果が媒体ごとに曖昧で、サンプル数が限られているものが多いことから一概には言えないのが実情であるが、体感値として、月間1万円程度の課金ユーザーが一定数いることは間違いない。
パチンコ業界が狙いたいのはこの層であり、単純に使用金額だけを見れば、十分に誘引できる可能性を秘めていそうにも見える。
以下は筆者の持論だ。
結論から言えば、今のパチンコ業界に、この「20代1万円課金層」の「奪回」は出来ないと思っている。
なぜなら「スマホゲームに(若年層の)客を取られた」というパチンコ業界関係者は多くいるが、彼らのほとんどは、スマホゲームに「お金(売上)」を取られたと思っているからだ。
パチンコが、スマホゲームに奪われたのは、20代の若者の「小遣い」ではなく、パチンコが、スマホゲームに奪われたのは、20代の若者の
「暇な時間」である事に気付いている人は少ない。
本当のところは、休みの日や仕事帰りの特に予定もない時に、「しようがねぇな、やること無いからパチンコでも行くか」という若者が減り、「家でスマホ」という若者が増えただけなのだ。
パチンコを支えてきたのは、人々の「暇な時間」だったはずだ。その証拠に、スマホに依存しない、団塊の世代は変わらず繁くパチンコ店に通っているではないか。日遊協2018ファンアンケートの結果でも60代以上の男性64.8%、女性58.4%が「2日に1回以上」パチンコ店で遊技している。
パチンコ店が新規ユーザーとして若年層を引き入れたいのであれば、20代男女の「暇な時間」をどれだけ充足させてあげられるのかに焦点を当てなくてはいけない。パチンコとは余暇産業であるという事をもう一度思い出すべきであろう。
しかし絶望的な事は、
今の世の中に、スマホ以上に暇つぶしに適したものが無いということ。
ただ一つ、一時的な収集欲や優越感を得ることは出来るが、結果的にはただただ消費されるだけのスマホ課金と違うパチンコ独自の強みがあるにはあるが、その事を公言は出来ないということ。