観光化された「ヴェジタリアン・フェス」とはまた違うガチ感
関羽の像や様々な仏像があらかじめ用意されている
串を身体に刺し、火渡りをする儀式はこのベトナム寺院「ワット・ユアン・サパーンカーウ」だけで行われているものではない。そもそも北部の県で行われていたものを持ち込んでいるし、南部のリゾート地プーケット県の儀式は世界的に有名である。
なぜバンコクのほうはあまり有名ではないのかというと、プーケットのように観光収入化がされておらず、開催日時が直前までわからないという致命的な問題もある。筆者も取材のために1ヶ月も前から寺院に足を運び、また電話で何度も問い合わせるも、祭りの日程は数日前にわかったものの(1日ではなく1週間も行われていた)、肝心の串刺しのパレードや火渡りは当日までわからなかった。
この儀式は中国の武将「関羽」が神となった「関帝」が憑依することで霊力を身につけ、串を刺しても、火を渡っても痛みを感じないということを表している。開催日程がわからないのは、関帝がいつ降りてくるかがわからないからと寺院側には何度も説明された。参加者に話を聞くと、開催は関羽の誕生日に合わせているという。関羽の誕生日は不明ではあるが、清の時代は5月13日を誕生日としたため、おそらくそれに合わせている。
残念ながらメインの儀式は当日にわかったので、串刺しのパレードを知った段階ではもう間に合わなかった。火渡りは目星をつけていた日にぴったりで、そちらは見学できた。
この儀式では選ばれた者に関帝や関羽に関わった者たちが憑依する。串刺しのパレードや火渡りで彼らに触れたり、お布施をすることで一般住民もまた天に願いが届き、災いから逃れられると信じられている。プーケットでは毎年9月10月ごろの菜食週間に合わせて行われるが、儀式に関してはだいたい同じような考え方のようだ。
関帝が降りてきているところ
関帝廟に入っていく憑依者
1800年代から第2次世界大戦後までタイは移民を多く受け入れ、中でも中国人が多かった。関帝は勇ましい力が宿るだけでなく、商売関係の願いにも強いことから、中華系移民が多い地域ではこのように関帝信仰が強く、今でもこういった「奇祭」が開催される。