このような新築同然の不動産を手放すことになった経緯について、債務者はボソリとこぼす。
「高齢化社会で葬祭業は儲かってると思うでしょう。実態はヒドイもんで、私の会社ではこのまま廃業で全員路頭に迷うか、全員基本給4万円カットで凌ぐか選んでくれと言われました。再就職も難しいので4万円カットを選んだらこのザマです」
月4万円、年間48万円の収入減という事例での破綻。これは昨今働き方改革の弊害として報じられる残業代収入減の“当たり前”とされる額と同等だ。
もちろん銀行の審査体制や貸出基準に問題があることも否めないのだが、破綻者の傾向として注意しなければならないのは「背伸びすればなんとか買える」という収支バランスで、ギリギリの買い物に手を伸ばしてしまうことだ。
身の丈に合わない買い物、特にローン支払いという他者から金銭を借りての購入が招く結果には悲惨なものが少なくない――。
日本:13.5%
フランス:64.0%
アメリカ:90.3%
イギリス:85.8%
これは住宅流通戸数に対する中古住宅の割合を示したものだが、諸外国に比べ日本では中古住宅に対する評価額の出し方や、中古住宅の整備補修、そして流通といった市場開拓にまだまだ進むべき余地、進まなければならない余地がある。
もちろんこの裏には新築こそが理想と様々なメディアで囃し立てられてきた「新築神話」の影響や、高温多湿なうえに自然災害が多いという住宅の痛みやすい環境、日々進歩するローコスト住宅の安くて丈夫な建材開発という事情もある。
これらの事情を踏まえたとしても、生活の三大基盤と言われる衣・食・住の「住」に数千万円の負担や数十年に及ぶ支払いといった無理をさせることの道理は通らない。あくまでも生活基盤として、身の丈にあった手の届く範囲での選択が可能で、そのような購入を促すことが必要と言える。
残業代にボーナスという不確定要素を含んだ額面年収の目減りどころか、今回の事例のような基本給減という事例も、今後増えていくことになる可能性は否定できない。
安易に数十年というローンを組んでしまう前に、本当にこれだけの額を衣・食・住という生活基盤の「住」だけに費やして良いものか、今一度考え直してみるのはどうだろうか。
<文/ニポポ(from トンガリキッズ)>