身の丈に合わない物件購入は、たった数万円の収入減で破綻する<不動産執行人は見た34>

せっかく購入しても即、手放すことになってしまう例があとを絶たない理由とは(写真の物件と内容は関係ありません)

 働き方改革関連法案が4月1日より順次施行となり、日本の労働法制としては初となる残業時間の上限規制が設けられた。  これまでサービス残業との言葉に代表される賃金不払いや時間外労働などブラック企業問題が是正され、就業時間の短縮からプライベートの充実が実現するのではというポジティブな面もあれば、残業代を当てにしていた就労者からは悲鳴が上がるといったネガティブな一面も語られている。  中でも残業代ありきで生活設計を行っていた家庭では大幅な資金繰り改善や支出見直しが迫られており、残業代ありきの住宅ローンを組んでいる人々の緊張感はなおのことだ。 「額面年収50万円減は当たり前」とも言われるこの残業代としての見込み収入減から、住宅ローンの支払いを滞らせる人が来年度より増加してしまうのではとの報道もなされている――。  差し押さえ・不動産執行の現場では、この残業代問題という影が忍び寄るタイミングで台頭してきた問題もある。  以前に新築不動産の購入からわずか5年で差し押さえ・不動産執行となる人が増えているため、地銀のローン審査体制に問題があるのではというテーマの記事を書いたことがあったが、あれから1年も経たないうちに状況は悪化してしまった。

不動産購入後わずか1年で破綻

 ここ最近増えているのは新築不動産購入後わずか1年での破綻という事例だ。  ベッドタウンと呼ばれる街のはずれに開発されたばかりの小さな住宅街。  汚れのない三輪車、根の張りきっていない芝生、組み立て途中の犬小屋。新築の建売住宅が並ぶ真昼の街並みに不釣り合いなのは、我々差し押さえ・不動産執行人の存在だけだった。  呼び鈴に応対する債務者は40代前半ながらも、焼けた素肌にヒゲをたくわえるハーフパンツの若さ溢れる男性。既に奥さんと幼い子どもは実家に引き上げたようで、一人暮らしに持て余す3LDKはガランと債務者の生活用品だけを携えていた。  使われなくなっている2階にはマリンスポーツのグッズやウェアが並び、家族写真もいくつか残されている。内装外装ともに痛みは確認できず、今後の生活にもリフォームは不要。クリーニングのみの対応で生活が可能との判断になった。
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なぜ、債務者は新築同然の物件を手放したのか
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