六本木のバーに現れたドナルド・トランプ大統領(のそっくりさん)
意外にも酒は苦手だという金委員長(のそっくりさん)
2019年6月某日、六本木のとあるバーに金正恩とドナルド・トランプが登場し、シンガポール・ハノイに次いで三回目の歴史的緊急会談を行った。
……わけがない。そんなことになったら全世界の報道陣が殺到していたに決まっている。姿を現した二人は、そっくりさんである。
だがそっくりさんとしてのクオリティは非常に高く、一瞬本物と見間違えるのも無理はない。そして平昌、シンガポール、ハノイ等ニュースの現場に出現しては注目を集めている。
そこで今回、東京の街がこの二人にどう反応するか、半日密着して散策することにした。
その翌日午後、筆者は二人が滞在する上野のホテルで待ち合わせた。金正恩委員長のそっくりさん、「ハワードX」氏は香港在住の豪州人で、故・金正日が三男を後継者としてお披露目した際に自分がそっくりであることに気づき、現在の活動を始めたという。
トランプ大統領のそっくりさん、デニス・アラン氏は米国籍で、二人とも元々はミュージシャンである。現在は
“Tyrants”(暴君たち)というバンドを組んでおり、新メンバー募集中だという。
どんなメンバーを探しているのか聞くと、「
習近平のそっくりさん」で、「何か楽器が弾ければなおよい」とのことであった。自薦他薦を問わないので、心当たりがある方はぜひ筆者か編集部にご一報いただきたい。
当日、彼らの東京巡りに随行した筆者。二人との取り決めで外にいる間は金正恩を「Supreme Leader」(最高指導者様)、トランプを「ミスター・プレジデント」と呼ぶことにした。
最寄りの駅に向かうと、あまりに激似で歩行者が全員振り返りガン見している。そのうち半分以上が写真撮影を求めてきた。するとハワードXは「一人千円だ」と叫んだが、中には本当に3ショットのため千円払う人も現れた。筆者は「なぜ1000円なんですか?」と聞いてみた。
「この恰好を作るためにどれだけの手間がかかっていると思っているんだ? まして、外を歩いていれば確実に人だかりができて大騒ぎになって我々の時間がとられる。だから少しでも騒動を鎮めるために1000円と言っているんだ」
しかし、毎回1000円を要求しているわけではない。地下鉄で着席して話し込んだのち、「絵になる場面が欲しいだろ?車内を歩いて皆に挨拶しよう」とあちらから切り出してきた。
「アニョハセヨ」と乗客に接近する金正恩氏のそっくりさん。車内は突然の事態に騒然となる
ハワードXが鷹揚に「アンニョンハセヨ」と言いながら手を振ると、乗客が全員振り返る。筆者もSPとして、サングラスをかけて半歩後ろから「アンニョンハセヨ」と挨拶した。女性からの3ショットリクエストでは現金を要求しなかった。
「電車の中なら人だかりができて混乱することはないからな」
「優先席」の表示がやけに馴染む(写真は読者提供)
インド系とおぼしき観光客一家を見て、ハワードXは「インドからですか?」と声をかけた。「いえ、シンガポールから来ました」
「素晴らしい、リー・シェンロンはオレよりマシな独裁者だ」
言っていることそのものは、確かに間違ってはいない。