米国・韓国大使館の側を通りがかっただけで拘束寸前に!
今度は東南アジアのムスリム一家と出会った。ハワードXが「マレーシアですか?」と聞くと「インドネシアです。あなたこそ、どちらから?」と言うと、尊大な様子で「平壌だ」と言い放った。こうなると、SP役として筆者も乗るしかない。
「こちらの最高指導者様は、あまりにも偉大すぎて名前を口にすることすらできない」
そうしていると、溜池山王に着いた。地上に出ると目の前に米国大使館があり、「ドナルド・トランプ」は米国人なので、敷地内に入れないだろうかと思案したが、米国大使館は非常に高い壁で囲まれており、一種の「城塞」である。入れそうな雰囲気ではない。
我々はただ周辺を散歩しただけだが、気付くと十人近くの警察官に取り囲まれていた。
警察官「一体、何をやっているのですか?」
筆者「散歩しているだけですけど」
警察官「こういう時期ですので、冗談はやめてください」
「こういう時期」が「G20」をさしているのか、「ハノイ会談決裂」をさしているのかよくわからないが、とにかく退散することにした。
アメリカ大使館に近づくこともできずしょんぼりのトランプ大統領(のそっくりさん)
その後、我々は二人の要望で目黒の寿司屋に向かうことに。
この二人の宿命として、「太らなければならない」というものがある。40歳でフルマラソン3時間20分を切る筆者とは正反対だが、「トランプ」氏は高齢と肥満が重なり、歩くのも苦しそうだったのでタクシーを拾うことににした。
その途中、麻布十番の韓国大使館付近を通りかかった。ここでタクシーを降りると米国大使館の二の舞になるのではという不安がよぎったが、ここでちょっと降りてみたいという2人。最近の北と南の融和的関係から考えてもう少しシャレがきくのではないか? ということで渋々降車する彼らに続いてみた。
結論から言うと、我々の見通しは甘かった。
タクシーを降りてものの数分で米国大使館のとき以上の警官たちに囲まれ、名刺と身分証明書の提示を求められた。
日本語が話せる筆者が重点的に「こんなことして外交問題になったらどうするんですか?」と詰められ、平身低頭するしかなかった。
「場合によっては麻布警察署までご同行願うかもしれません」
まさか、顔が似ていると、散歩していただけで逮捕されるのか? そんな理不尽な……。
結局逮捕は免れたが保険証と名刺の個人情報はきっちりととられてしまった。
筆者としては、単に外国から来た新しい友人に都内を案内しただけで、それ以上の意図は何もなかった。ただ、指導者に似ているというだけで、それは大きな意味を持ってしまうのだ。この場を借りて関係各位には深くお詫び申し上げたい。
韓国大使館前で日本の警察官にギチギチに詰められる金委員長(のそっくりさん)
日本の警察官に怒られながら、東アジアの平和を憂い遠い目をする金委員長(のそっくりさん)
次回は、さらに深く話してわかった金正恩こと「ハワードX」を突き動かす原動力・正義感について掘り下げていきたい。
SPよろしく、二人に随行する筆者
<取材・文/タカ大丸>
【タカ大丸】
ジャーナリスト、TVリポーター、英語同時通訳・スペイン語通訳者。ニューヨーク州立大学ポツダム校とテル・アヴィヴ大学で政治学を専攻。’10年10月のチリ鉱山落盤事故作業員救出の際にはスペイン語通訳として民放各局から依頼が殺到。2015年3月発売の『
ジョコビッチの生まれ変わる食事』は15万部を突破し、現在新装版が発売。最新の訳書に「
ナダル・ノート すべては訓練次第」(東邦出版)。10月に初の単著『
貧困脱出マニュアル』(飛鳥新社)を上梓。 雑誌「月刊VOICE」「プレジデント」などで執筆するほか、テレビ朝日「たけしのTVタックル」「たけしの超常現象Xファイル」TBS「水曜日のダウンタウン」などテレビ出演も多数。