ワンオペ育児、マミートラック、専業主婦の苦悩。日本では子育て中の女性が置かれる環境は厳しい。政府が掲げる「女性活躍」とはほど遠い現状だ。
男性の立場も苦しい。育児休業を取得した男性が復職後に嫌がらせを受けたり、理不尽な転勤を命じられたりするなど、会社と家庭の板挟みになる例も少なくない。
現在の日本では、働き方を含め「家事と育児を家庭で担ってくれる主婦を前提とした」仕組みがまかり通っており、女性はたくさんの負担を強いられている。
6月中旬に発売された『なぜ共働きも専業もしんどいのか 主婦がいないと回らない構造』(PHP新書)では、日本が抱える「主婦に依存した社会構造」の問題点に触れている。
著者は、子育てや働き方改革についての記事を多く執筆するジャーナリストの中野円佳氏。
本書では、専業主婦、共働き、男性がそれぞれ直面する「しんどさ」が生じる背景を見つめ、どうすればよいかを考えている。
中野氏は現在、夫の転勤にともないシンガポールに住んでいる。同国では共働き世帯が多いが、ヘルパーや外食などを使い、「日本よりもしなやかで余裕があるように見えた」という。同時に、日本女性が抱える負担を痛感した。
「多くの日本人の女性は三人分の仕事をしているように見えた。つまり、母親や妻としての役割に加え、他国であればメイドなどに外注している家事労働の二人分、あるいは不在がちな父親の分も含めて三人分の無償労働をしている」
文字にして眺めるとかなりのインパクトがあるが、これが現実だ。それどころか、社会的には「当たり前」とされている風潮すらないだろうか。
一方の男性は、「一家の稼ぎ主」であるプレッシャーから、仕事をして家計を支える方に傾き、家庭に関わる時間は少なくなる。職場の上司が「専業主婦の妻がいるので仕事だけに集中すればいい」との考えを持っていれば、早く帰れない。そうすると、専業、共働きを問わず女性が家庭のことを一手に引き受けることになり、負担が増していく。
2016年社会生活基本調査によれば、日本人の6歳未満の子供を持つ夫婦の一週間の家事などの時間(育児含む)は、男性が1.23時間に対し、女性は7.34時間と、大きな差が開いている。女性偏重の現状が浮き彫りとなっている。
男性がこれだけ「家事や育児をやらずにすむ」のは、女性がサポートするのが当然、との考え方があるためだろう。