妻を召使いのように扱う夫は、死を望まれていると心得よ<モラ夫バスターな日々17>

弁護士・大貫憲介の「モラ夫バスターな日々<17>

 離婚の法律相談に来た妻(30代)は、大粒の涙をこぼしながら、 「(あんな旦那)死ねばいいのに」と声を絞り出した。  さて、法律事務所にくる相談者は、ある程度、離婚したい気持ちが高まってから来る。それでも、離婚に踏み切れない妻たちは多い。どんな横暴な男であっても、子の父親として必要なのではないか、離婚後の経済的な不安、周囲の反対、離婚「裁判」に対する不安、さまざまな思いに妻たちは悩む。  しかし、ここ10年、支配され、抑圧された妻たちが抱く思いには大きな変化があった。前回、ご紹介したとおり、この12年間で、中高年のセックスレスが倍増し、約7割となった。

「今すぐ死んで欲しい」と毎日思っている

 2015年に始まったサイト「旦那デスノート」は、「夫に今すぐ死んで欲しい。毎日思っている。」を標語に掲げ、これに共感する妻たちが、旦那を呪う言葉を日々投稿している。(旦那デスノート)  例えば、自分をメイド扱いする夫への恨み、仕事、風呂、メシ、寝るだけの「自分のことだけしかしない(夫の)生活態度」に呆れ、今すぐ死んでくれ、事故死を望むなどの投稿が並んでいる。夫の歯ブラシで便器を掃除するとの投稿や油こい、塩辛い食事を用意する旨の投稿もあった。これらの投稿内容が決して笑えず、軽視できないのは、ここに投稿しない妻たちの相当な割合が、この投稿内容に共感すると思われることである。  ツイッターでは、モラ夫たちは、モクソ、クソ旦那などと呼ばれ、クソ旦那に対する恨み、つらみが綴られることも決して少なくない。

「夫は早く死んでしまえばよい」が55%

 旦那デスノートやツイッターでの妻たちの恨みの言葉は、ときに過激ではあるが、モラ夫からされていることを丹念に見ていくと、決して、特殊な事例ではないことがわかる。  妻たちは、メイド扱いされ、日々ディスられ、怒鳴られる。夫たちは、家事、育児を分担せず、自己中心的に振舞う。夫たちは全く反省せず、全てを妻に責任転嫁する。このような振舞いは、日本のモラ夫たちのいわば「標準的言動」であり、何ら特殊なものではない。  「夫源病」の命名者で医師の石蔵文信教授のアンケートでは、離婚を考えている妻は「しばしば」が42%、「たまに」が41%で計83%。「経済的な心配がなければ離婚するか」で、「今すぐ」「近い将来」を含め63.7%。また、「早く夫が死んでしまえばよいのにと思ったことがある」が55%とのことである。 (離婚したい妻83%も? 「夫源病」命名者が講演 世のお父さん注目のデータ)  石蔵教授のアンケート結果は、私の弁護士としての経験、知見とも一致する。多数の妻たちは、離婚に踏み切れないまでも、心の中では、離婚を希望している。そして、密かに夫との死別を望んでいる。旦那デスノートによると、死に方としては、事故死が一番良い。看病しなくてよいし、事故死特約があれば、生命保険金が倍額出ることもある。
次のページ
モラ夫被害者である娘と旧世代の母の価値観がぶつかったが……
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会