モラ夫被害者である娘と旧世代の母の価値観がぶつかったが……
私の事務所に離婚の相談に来た40代の女性は、離婚したいが決心できないと言う。親が反対するらしい。女性は、憔悴しきっており、日々モラハラを受けている苦しみが顔に出ていた。
離婚手続きの概要、離婚条件の相場等を説明し、ご自身が幸せになることが何より一番であり、子どもたちもお母さんの幸せを望んでいるに違いないと励ました。女性は、大粒の涙を流し、離婚したい思いでいっぱいになったが、決心がつかず、帰っていった。
数か月後、同じ女性の相談が入った。相談室に入ると、70代の女性が横に座っていた。女性が、離婚に反対している母親を連れてきたのだ。
母親は、「(夫も)そんな悪い人ではない」「(娘は)もう少し我慢できるのではないか」と次々に疑問をぶつけてきた。
母親が育ってきたモラ文化、内在的価値観と娘の決断が矛盾し、悩んでいるのだった。私は、娘さんの受けている精神的ダメージが深刻であること、これがこのまま続くと、心身症が悪化すること、母親である女性が幸せになれなければ、お孫さんも決して幸せになれないことなどを説明した。最後は、女性の母親も、納得し、離婚を応援する約束をしてくれた。
私の事務所に相談に来た、日本人と結婚した中国人の中年女性が、しみじみと言った。
「中国人は妻を甘やかすけど、日本の男は本当に厳しいから、国際結婚たいへんだよ」
私の知る限り、中国男性たちのモラ度も相当なものだが、中国人女性からみると、日本男性のモラ度は、それよりも更に、高いということだろう。
繰り返すが、日本のモラ夫たちに対する妻たちの怨嗟の声は決して特殊な夫婦の問題ではなく、一般的な夫婦に存在している問題である。女性の権利意識の高まりや、「(女性たちが)我慢しなくなった」こととも関係はあるとは思う。
しかし、そこが本質ではない。以上に述べた深い闇の根本的な原因は、モラ夫たちの理不尽で、自己中心的な振舞い、内在的価値観(モラ文化)にある。
何度でも言う。日本のモラ文化を断ち切り、モラ夫たちが改心しない限り、日本は沈み、不幸になっていく。
【大貫憲介】
弁護士、東京第二弁護士会所属。92年、さつき法律事務所を設立。離婚、相続、ハーグ条約、入管/ビザ、外国人案件等などを主に扱う。著書に『
入管実務マニュアル』(現代人文社)、『
国際結婚マニュアルQ&A』(海風書房)、『
アフガニスタンから来たモハメッド君のおはなし~モハメッド君を助けよう~』(つげ書房)。ツイッター(
@SatsukiLaw)にてモラ夫の実態を公開中