元東電技術者、蓮池氏が「逃げられるわけない」と絶句した、伊方発電所の問題だらけの「避難路」

海路避難の場合の集合場所、三崎港

伊方町観光交流拠点施設 「佐田岬はなはな」

伊方町観光交流拠点施設 「佐田岬はなはな」2019/06/10ドライブレコーダによる
すでに陽は岬の影に隠れ、「佐田岬はなはな」は、閉館している。何やら景色が依然と激変している

 三崎港は、伊方町の避難計画では伊方発電所以西の住民が海路で避難する場合の集合場所です。この港には伊方町観光交流拠点施設 「佐田岬はなはな」が隣接しており、新鮮な魚介類が格安で購入できるのですが、あいにくすでに閉館していました。ここからはきれいな海が見えるのですが、何やら様子が違います。
三崎港

三崎港2019/6/10牧田撮影
防潮堤が倍以上に増高されており、海が見えなくなっている

 なんと、防潮堤がかさ上げされており、海が見えません。三崎港は、防潮堤の外側になっており、三崎港の集落全体が防潮堤の内側になるように工事が進められています。
三崎港防潮堤から集落を見る

三崎港防潮堤から集落を見る 2019/6/10牧田撮影
防潮堤はまだ建設中で、国道側には水密扉がない。集落は、国道の高さにあり、津波により集落が被害を受けるのを防止することが課題となっていた

三崎港 防潮堤の上から撮影

三崎港 防潮堤の上から撮影2019/6/10牧田撮影

 一同、港町が海から隔離されつつある状況に絶句です。 「佐田岬はなはな」は、海を見ながら芝生の広場でのんびりするのが売りだったはずですが、今では壁を見ながらと言うことになり興ざめです。「佐田岬はなはな」を防潮堤の外にするなど手はなかったのでしょうか。かなり残念ですが、一方で防災を考えると「佐田岬はなはな」は防災拠点になり得ますので仕方のない事だったのでしょう。
「佐田岬はなはな」より見た三崎港

「佐田岬はなはな」より見た三崎港 2015/08/28牧田撮影
かつて、三崎港の防潮堤はたいへんに低く、「佐田岬はなはな」から海が見渡せた

 防潮堤は、3m以上にかさ上げされており、三崎港とは防水扉で仕切られています。  2016年の避難訓練では、海自艦艇も動員した大規模なものでしたが、海自艦艇にこどもたちを乗せたところで台風による波浪のために出港できず、洋上輸送は中止となっています*。 <*参照:“伊方原発:避難訓練 乗船訓練中止に 参加は対象の1割弱 /愛媛 – 毎日新聞” 2016/09/05 仮に三崎港へ住民が集まることができても津波や高波で船が出せなくなることは十分にあり得ます。何しろ原子炉が勝手に壊れることは滅多にありませんが、台風や津波、大雨、地震で原子炉が壊れることはあり得ることで、そういったときに港が機能しない可能性があるのです。  また三崎港集落自体が津波災害危険地域で、三崎高校などの避難所は山の上にあります。そういったこととの整合性が避難計画には欠けています。  伊方町は、職員に大型自動車免許を取得させるなど、避難時のバスの運行を確保する努力していますが、根本的なところで計画に欠陥があります。

多重防護原則を無視した世耕経産相発言

 国と原子力事業者、自治体には、「原子力・核災害は起こる」という大前提から多重防護の第五層を整備する責任がありますが、6月19日の経済産業委員会では世耕弘成経産大臣が「再稼働するしないの話と、避難計画は関係ないと考えている」と答弁しています*。 <*参照:世耕大臣「再稼働するしないの話と、避難計画は関係ないと考えている」 2019/06/19衆院・経済産業委員会24分以降>  合衆国では、ちょうど30年昔の1989年に、避難計画を策定できなかったショーラム原子力発電所が完成しながら操業開始できず廃炉となったように、世界では多重防護の第五層に当たる実効性のある避難計画の策定と全関係者参加避難訓練の実施は商用原子炉認可の必須条件という趨勢です。世耕氏が答弁したような日本政府と自民・公明両党の考えは、日本の原子力規制が世界でもまれに見る笊であることの原因となっています。  所轄大臣がこのようなふざけたことを答弁するようでは、核災害が発生したとき、福島核災害の地獄が再現することは間違いないでしょう。実際、伊方町と愛媛県の原子力防災計画は、ガラクタと言うほかありません。  さて佐田岬半島は、まだまだ西に続いています。そして集落はたくさんあり、住民は名取よりももっと凄いところにたくさん住んでいます。そして、国道197号線はここで終わりで、この先は町道と農道になり、大幅に規格が悪くなります。  本来は、この先も見なければなりませんが、もう夕暮れです。私は魚料理の美味しい民宿 (亀ガ池温泉のレストランもここが経営)を知っており、家族で泊まったこともあるのですが、蓮池さん、同行者二人ともすでに八幡浜の宿にチェックイン済です。  この民宿の先代など、地元有志が佐多岬灯台周辺の観光化事業を計画し、伊方町とともに進めるなど、過疎化と必死に闘っている様なども紹介したいのですが、今回は涙をのんで三崎港から引き返しました。
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伊方町と伊方発電所の置かれた環境
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