「超独身国家」に突入する日本、モノ・コト消費からエモ消費へ

ストレオタイプ脅威が視野を狭めてしまう

中野信子氏

 荒川氏が話をリードする中で、脳科学者の中野氏は世の中に流布する固定観念や思い込みについて科学的な角度から説明した。 「人には、否定的な固定観念を自覚すると、無意識にステレオタイプと同じ方向へ流される心理がある(ストレオタイプ脅威)。女性だから、男性だからという思い込みを信じすぎても視野を狭めてしまう」  例えば、血液型から、自分や他人の性格を決めつけてしまうこと。心理学の研究では、血液型と性格との間には相関がないということがわかってきている。  また、男性はスペック重視で論理的。女性は直感に頼り、情緒的で共感好き。このような男性脳、女性脳という考え方にも疑問を呈した。 「男性と女性では分泌するホルモンが違うが、育った環境や経験などの個体差によるところが大きいことがわかっている。つまり性差によっては大きな違いはないのに、ステレオタイプがあることで無意識にその方向へ流されてしまう。」  ニューロマーケティングとは、脳科学の知見を生かし、消費者心理を分析してマーケティングする手法だ。幸福度や満足度など本来測りづらいものを、マーケティングに生かすため、尺度(メジャー)を入れて何とか定量的に導き出そうとするのだという。  その結果、ステレオタイプ脅威を誘導してしまう恐れがあることに中野氏は言及した。しかし、人間は意識しようとしても無意識に固定観念に寄った考えで行動してしまいがちだ。 「意識を変えるよりも、環境を変える方が良いのでは。」と荒川氏がステレオタイプとの向き合い方について補足した。

これからはエモクラシー時代が到来する

 独身者が増加し、ソロ活市場が成長していく中で、今後のマーケティングはどのように変わっていくのか。荒川氏曰く、広告やCMは本来は伝えるために行うものなのに、最近では嫌われないために行うことが増えているという。 「これまでの広告業界は、女性用や男性用などのクラスタ分けしかやってきていなかった。しかし、最近ではこの商品知っているし、とても好き。でも買わないという現象が起こっていると思う。」  企業が一方的に宣伝をしても、”自分ごと化”できなければ頭に残らず、イメージだけ残り消費行動に移らない。感情や直感に訴えかけてそれらを理屈づけして消費者に伝えることが大切だと説いた。 「モノコト消費からエモ消費へ変わってきている。共感を生むのが大切だと言われるが、感情の理屈付けをしてあげることが、消費行動を促すのに大切になってくる。」  荒川氏は、次のように説明してトークイベントを締めくくった。 「政治も経済も感情主義へ。まさにデモクラシーならぬ『エモクラシー』の時代が到来する。感情を理解することが、これからの消費行動において大切になってくるのではないか」 <取材・文/古田島大介>
1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている。
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