都営住宅で進む高齢化、孤独死や買い物難民に陥る危険も
低所得者が入居する公営住宅。東京都には都営住宅が25万1693戸(2018年)あり、各区に区営住宅がある。現在、都営住宅は、名義人が亡くなると同居の家族が退去せざるをえない制度になっており、居住者からは制度の改善を求める声が上がっている。
都営住宅では、名義人が死亡した場合、名義人の配偶者しか継続して住むことができず、子どもは退去しなければならないことになっている。そのため、例えば、名義人である父親が亡くなった場合、妻一人が残され、子どもは引っ越しを強いられることになる。
こうしたルールが様々な問題を引き起こしていると指摘するのは、東京都公営住宅協議会の小山謙一会長(77)。つい最近も、次のようなケースが起きたという。
「80代の母親と50代の娘が2人で暮らしている世帯がありました。娘は、肺がんを患った母親を介護するため、わざわざ引っ越してきたんです。それなのに母親が亡くなったため、娘さんは都営住宅を退去せざるをえなくなってしまいました」
以前は、名義人と同居していた親族は、継続して住むことができた。しかし国土交通省は2005年に承継の条件を厳格化。それ以降は、名義人の配偶者と高齢者、障害者しか継続して住めないこととなった。
ただし、実際に条件を厳格化するかどうかは、自治体に一任された。多くの自治体とは異なり、東京都は都営住宅条例を改定し、承継の条件を厳格化した。
また都営住宅に入居するためには、世帯の所得が一定の水準以下であることが求められる。一般世帯で月収が20万円以下、高齢者・障害者がいる世帯で26万8000円以下だった基準は、2009年以降はそれぞれ15万8000円以下、21万4000円以下に変更された。
例えば、4人世帯で都営住宅に暮らしていた場合、子どもが働き始めて世帯年収が基準値を超えると、退去しなければならなくなる。そのため、子どもが働き始めると同時に家を出て、老夫婦が残されることがある。
小山さん自身も、子どもと同居できずに困っているという。
「私も妻もがんを患っています。子どもと一緒に住むことができれば、何かと便利で心強いのですが、収入の要件があるため、子どもと一緒に住むことはできません。どちらかに介護が必要になれば、『老老介護』をしなければならなくなります。子どもがいれば、団地の草むしりや防災訓練にも参加してもらえるのでとても助かります」
名義人である父親が死亡すると妻しか住まいに残れないことに
入居のための所得水準も厳格に
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