在ベトナムの邦人起業家、差別発言で大炎上。現地日本人社会も困惑

好景気だけに惹かれてきた「意識高い系新移住者」

 ベトナムの日本人社会は20年近く前のタイの邦人者数と同じくらいの規模で、特にハノイ市内の日本人たちは助け合いの精神で、ベトナム南部のホーチミン市の日本人社会より友好的な関係だそうだ。それなのに、その中でも以前からあまり芳しくない評価だったという。この炎上は起こるべくして起こったとも思えてくる。 「新興勢力」というのは、最近移住をしてきた若い人たちを指す。筆者の住むタイにもそういった人たちが少なくない。近年の東南アジアは景気がよく、企業による進出も多いし、個人で移住して起業する人もいて、その中には30代、あるいは20代といった若い人も多い。そして、残念ながら、若い起業家の一部は残念な方向に「意識が高い系」であることがある。  別の日系企業に勤める日本人は「自分中心のバカのせいで悪く見られるのが、普通に迷惑。無理せず日本で仕事しろと言いたい」と語っている。ベトナム人の怒りの声にも「日本に帰れ」といった言葉が多く見られる。これには昨今の日本でのベトナム人雇用のトラブルも関係しているのではないかとホーチミン在住の日本人が話している。 「日本国内の技能実習生への酷い扱いや、その反面で増えているベトナム・ヘイトみたいな雰囲気があるかと思います。それはベトナムにも伝わっていますが、それでもベトナム人は在住者や観光客に対しては親日的です。しかし、このニュースのおかげで、ベトナム在住日本人もこんなひどいこと書くのか、となり、こんなことを言う奴は日本に帰れと炎上しているのだと思います」

日本国内でのベトナム人差別が在ベトナム邦人社会にも影響

生真面目な駐輪

ベトナム人気質か、バイクの駐車に関してはどこもきれいにきっちりと並んでいる

 東南アジアの国々は家族や友人への帰属意識や愛情が非常に強い。もちろんどの国にも自分の民族が一番という思想はあるが、東南アジアは愛国心や団結力が日本人が思う以上に高い。また、個人が自由であることは権利であるという考えが当たり前だ。そのため、日本人が日本にいる感覚で、気にくわないからとその国の人を貶めるようなことを言えば、このようにたちまちネットで騒ぎになり、「日本」が批判の対象になってしまう。  特にハノイ在住日本人たちは「日本国内の技能実習生への酷い扱いやベトナム・ヘイトの実例がいろいろと暴露されているので、これをきっかけにベトナム国内で日本人ヘイトへの狼煙が上がるのではないかと、こちらはビクビクものです」という状況だという。  日本国内の差別的な技能実習制度や、その差別意識をそのままベトナムに持ち出した「意識高い系」の勘違い日本人たち。  ハノイで長年地道に地位を築き上げてきた日本人たちは、この「炎上」の行方を見定めているところである。
ハノイの旧市街

ハノイの旧市街は緑が多く、町並みも美しい

<取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:@NatureNENEAM)> たかだたねおみ●タイ在住のライター。近著『バンコクアソビ』(イースト・プレス)
(Twitter ID:@NatureNENEAM) たかだたねおみ●タイ在住のライター。最新刊に『亜細亜熱帯怪談』(高田胤臣著・丸山ゴンザレス監修・晶文社)がある。他に『バンコクアソビ』(イースト・プレス)など
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