話題の映画『RBG』日本版コピーに見るジェンダーバイアス。日本の映画配給会社のカビ臭い感性に辟易

RBG日米ポスター比較

左がアメリカ版のポスター。右が日本版

 現在、世界基準で見て最も尊敬されている一人にも数えられる女性、アメリカの最高裁判事ルース・ベイダー・ギンズバーグ(以下、RBG)のドキュメンタリー映画『RBG 最強の85才』が公開中だ。しかし、同作を宣伝する側がそのことを理解しきらずに、逆に女性差別を助長しかねないコピーをつけたことが一部で問題視されている。

海外では重要な役職の最高裁判事

 最高裁判事。この職に就いている方には申し訳ないが、残念ながら日本では意識されているとは言い難い職業で、選挙の際の信任投票でも「急に審査しろと言われても……」となりがちな役職だ。  だが、欧米社会において最高裁判事というのは、「国民の生き方を左右する存在」として大いに尊敬されている。筆者の住むブラジルでは、在任期間が長いこと(定年75歳)やテレビでも裁判のニュースが頻繁に報じられることもあり、その存在は大臣よりもはるかに有名。ある程度ニュースに興味のある人ならスラスラと名前を挙げることさえできるものだ。  その法判断が全米のみならず、全世界的にもひとつの大きな基準として注目されるアメリカの最高裁判事なら、その存在はひときわ大きなものだ。しかも、アメリカでは定年はなく終生職なので、一旦職に就けば20年でも30年でも就任しているのでおなじみにもなりやすい。  RBGはビル・クリントンが大統領に就任した‘93年に史上2人目の女性最高裁判事として任命された。そのときも注目はされているが、彼女の真価はかなりの保守派も決して少なくないアメリカの最高裁の法廷において、「性別を始め、マイノリティということで差別されること」を断固として反対し続ける強固な姿勢だ。  彼女の判断によって、これまでに女性に許されてこなかったものが法律で保障されるような事態も生まれている。人はやがて彼女のことを、伝説的なラッパー・ノトーリアスBIGに引っ掛けて「ノトーリアスRBG」と呼ぶようになり、ネット上では彼女の顔をワンダーウーマンやブラック・ウィドーなどアメコミ映画のスーパーヒロインにはめ込んだミームが出回るほど、若い人たちからの熱狂的な支持を得るようになった。

全米で異例の大ヒットを記録

 メディアは「80歳を超えた、小柄で物静かな女性が若者のハートを捕らえている」と、異例の社会現象だとして報じ、‘18年には彼女の若き日を描いた映画『ビリーブ 未来への大逆転』、そして前出のドキュメンタリー映画『RBG 最強の85才』が全米映画興行成績でともにトップ10にヒットになるという、世界の司法の歴史において前代未聞の快挙まで成し遂げられている。  そうしたアメリカでの波が伝わってか、日本でも今年に入ってから『ビリーブ 未来への大逆転』、そして『RBG 最強の85才』が劇場公開されるに至った。「通常、政治家やスポーツ選手、音楽や映画以外での外国の有名人には興味を示さない日本にしては珍しい判断だな」と、僕は驚き、そして喜びもした。  だが、僕はツイッターを通じて、日本における極めて残念な事実を知らされてしまうことにもなった。このドキュメンタリーの日本版ポスターに掲げられているコピーを目にし、「ふざけるのもいい加減にしろ」とばかりに大いに呆れもした。
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