難民申請中のクルド人が「理由なき」収容。長期化する収容に絶望も

家族には会いたい。でもお互いに辛いから、もう来てほしくない

ルール

2018年2月28日、入国管理局長が全国の収容所長などに宛てた「指示」。重病者以外は仮放免を継続する指示が書かれている

 さらに2018年2月28日には「重度の傷病等を除き、収容を継続せよ」との指示を出しているのだ。  4月2日の収容後、ゼンギンさんの家族や知人が次々と面会に訪れた。妻と2人の子ども(9歳と2歳の男の子)も複数回訪れたが、事情がわかるはずもない2歳の次男は、アクリル板を普通のガラス窓と思い込み、お父さんに抱っこしてほしくて何度も「窓」を開けるための取っ手を探した。ゼンギンさんはこれが辛かったという。 「家族には会いたい。でも、もう来てほしくない。長期収容になるなら、お互いに辛いから」

収容所は「難民申請者の保護施設ではなく、期限のない刑務所」

田中代表

「牛久入管収容所問題を考える会」の田中喜美子代表。街で暮らす外国人からの相談も受けている。 後姿がゼンギンさん。2018年7月

 今回の収容の理由が「重量オーバー」ならば、わからないのは「過去のスピード違反では、ゼンギンさんは収容されてこなかった」という事実だ。ゼンギンさんが日本の運転免許証を取得したのは2011年。以来、何度かスピード違反で罰金を払っている。だが、仮放免更新手続きは滞りなく済ませていた。  筆者はその後もゼンギンさんと面会した。彼はアクリル板の向こうからこう訴えた。 「入管は、私が長期収容に耐えられずに『トルコに帰ります』と言うのを待っているのかもしれない。でも、トルコは年々クルド人への締めつけが強くなっている。今帰ったら、オレ危ないよ。帰れないよ。だからといって、ここに何年もいるの? 悪いことをして刑務所に入っても、何年で出られるかはわかる。でもここは、難民(申請者)の保護施設じゃなくて、実質は期限のない刑務所だよ」
次のページ
突如行われる「理由なき強制収容」
1
2
3
4
ハッシュタグ
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会