毎年5月から6月にかけては、ウミガメの産卵シーズンでもある。嘉徳浜は、環境省の生物多様性センターが「重要生態系監視地域モニタリング推進事業」として全国で行っていたウミガメの生態調査地41サイトのうちの1つでもあった。
2002年には“世界最古のウミガメ”とも言われるオサガメが日本で上陸産卵した唯一の浜としても知られている。嘉徳浜には、今年もウミガメの上陸した痕跡があったと島民が写真を見せてくれた。
5月上旬、嘉徳浜に上陸したウミガメの足跡(住民撮影)
それを知ってか知らずか、土建会社は「砂浜付近の生物を除けるため」と大量の杭を準備し、工事は予定通り着工した。
環境省と県と地元自治体が一体となり、2020年の世界自然遺産登録を目指す奄美大島。そこには、環境保全や生態系とは矛盾した、防衛の要地としての“国策”ともいえる乱開発との攻防が日々起こっている。
なぜ、今になって「コンクリート護岸が急に必要」になったのか? 高齢化が進む限界集落の住民からの「早期着工を求める要望」として、請願書を作成したのは誰だったのか?
太古の風景をそのまま残した“ジュラシック・ビーチ”とも称される砂浜と、そこに住む人々の生活が、さまざまな思惑に翻弄されている。
住民団体はリーフレットなどを作り、環境保全の大切さを呼びかけている
<文・写真/武内佑希>