十分にうんざりさせられたが、比較のために他の日にも参加してみた。そこでは、もっと酷い惨状が繰り広げられていた。
タレントと思われる女性がヨガ講師としてその日は檀上に立った。開口一番、「
隣の人と挨拶して自己紹介しましょう。そして自分の良いところを褒めあいましょう」と彼女は言う。
自己啓発セミナーで最初にやる、「例のシェア」である。ここはヨガイベントであって、自己啓発セミナーの技を繰り広げる必要はない。
このご時世、他人に個人情報を漏らすなど持ってのほか。それをイベントで無理やりさせられるのだからたまらない。その後も、隣の人と触れ合わせたい内容が続いた。ヨガも、「挨拶した隣の人の足の裏を持ってあげましょう」などと隣の人との無理やりな交流を強要する。
しかもヨガ講師で壇上に講師として来ているにもかかわらず、ヨガの定番ポーズを「腕立て伏せ」と呼んだりと、素人丸出し。参加していた中央部の参加者数人が、「そのポーズはチャトランガ」と突っ込んでいた。あまりにも素人すぎて「足を足のほうに延ばして」という説明には苦笑するしかなかった。
最後の最後にも「隣の人と自分を称えあいましょう」という調子だったので、筆者は早めに席を立つことにした。
そういったおかしな風潮を、世間を知らない若い受講者はそのまま受け止めてしまう。危険視するべき自己啓発セミナーの下地をヨガに通っているだけで刷り込まれてしまう。危険な兆候だ。
それにしても自己啓発に染まりすぎた内容を「ヨガ」として開催する主催者の意図はどこにあるのか。
たまたま居合わせた赤の他人との協調を押し付ける姿勢に、疑問を感じ得ない。
ベテランヨガ講師に現状を聞いたところ、「
独立起業のためにコンサルタントがヨガ講師に自己啓発セミナーは行くように勧めている場合もある。知らずに通ってしまうので危険と知らずにハマる人がいるのは仕方がない」という。
あちこちに怪しいスピリチュアルや自己啓発セミナーが潜んでいる昨今、家人や恋人がヨガを熱心にやっていると思っていたら、いつのまにか自己啓発セミナーに足を突っ込んでいたとならないことを祈りたい。
<取材・文/小手平走歌>