政治を司る立場にある人としては、子育てをめぐる状況の認識が不足しているのでは、と感じた。認識が足りなすぎると感じた。
国立社会保障・人口問題研究所が2015年に行った
「第15回出生動向基本調査」によると、子どもを持たない理由のトップは「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」なのだ。
住んでいる地域や子どもを通学させる教育機関によって変動するが、子どもひとりを成人させるまでに必要なお金は、約3000万円と言われる。
しかもつい先日、政府が「公的年金だけでは満足な生活水準に届かない可能性がある」との理由で、老後の生活資金を自分で蓄えてほしいと呼びかけたばかり。この状況で、子どもを3人も産もうとは思えないだろう。
現在子どもがいる親の状況も厳しい。都心部を中心に、預けたくても受け皿がない待機児童問題が深刻化している。復職を希望しても、保育園が見つからず退職を余儀なくされる親もいる。
夫が家事と育児に関わる世帯ほど第二子が生まれやすい
「子どもを産んで」と言うのではなく、「子どもを産みたい」「子育てをしたい」と思える環境整備が必要だと思う。
今月23日には、男性の育児休業義務化を推進する議員連盟が発足し、話題を集めている。「義務化はやりすぎでは」と是非は問われているものの、男性がもっと家事や育児に当たり前のように関わるようになれば、女性の負担は軽くなることは間違いない。長時間労働のため夫は家を空けてばかりで、妻が子育てを一手に担う状況では、「もっと産みたい」とは思いにくい。
実際、夫が家事と育児に関わる世帯ほど、第二子が産まれるとの調査結果もある。内閣府の
調査によると、諸外国と比べると、日本の男性が育児にかける時間は突出して少ない。
「女性は子どもを産んでほしい」と言うのではなく、保育園や学童といった預け先の問題解消や男性が育児をしやすい環境整備など、国民が「子どもを持つ選択をしやすい」と思える社会に向けた制度設計を考えてほしいと思っている。
<文/薗部雄一>
1歳の男の子を持つパパライター。妻の産後うつをきっかけに働き方を見直し、子育てや働き方をテーマにした記事を多数書いている。