宇宙から全世界にインターネットをつなぐ!? イーロン・マスクの新たな計画が発動

すべては火星移民のために

火星移民の想像図

スペースXが構想する火星移民の想像図。スターリンクから得られる利益は、こうした光景を実現するための資金源になるという (C) SpaceX

 マスク氏がこのような事業を手がけているのには、宇宙インターネットによるデジタル・ディバイドの解決が、ビジネスにつながるという確信があるからだろう。  マスク氏はまた、スターリンクで得た利益を「火星移民計画につぎこむ」と明言している。マスク氏はかねてより、人類を宇宙に移住させるという目標を語っており、スペースXは現在、そのための新型ロケット「スターシップ」の開発を進めているが、その開発と運用には多額の資金が必要となる。そこに、スターリンクで得た利益を充てるというのである。  ただ、スターリンクの「大量の人工衛星で全世界にインターネットをつなげる」というアイディアは、ほかにもいくつかの企業が事業化に挑んでいる。その筆頭にあげられるのが、「ワンウェブ(OneWeb)」という企業である。  同社はすでに、コカ・コーラやエアバス、クアルコム、そして日本のソフトバンクグループからも多額の出資を受け、今年3月には、最初の6機の衛星の打ち上げが成功している。

Amazonも衛星インターネット計画に参戦

 そして今年5月には、ネット通販大手のAmazon.comもまた、「プロジェクト・カイパー(Project Kuiper)」と名付けた、約3000機の衛星からなる宇宙インターネット計画を進めていることがわかっている。Amazonのジェフ・ベゾスCEOは世界一の大富豪で、またスペースXと双璧を成す宇宙企業「ブルー・オリジン」の創業者でもあることから、資金的にも技術的にも、スターリンクの強力なライバルになりうる。  さらに、米国の大手航空宇宙メーカーであるボーイングや、すでに衛星通信事業で実績のある企業なども、衛星数などに違いはあれど、同じく宇宙インターネット計画を進めているとされる。  先行するワンウェブ、後追いながら一気に60機を打ち上げたスペースX、圧倒的な資金力を背景に密やかに準備を進めるAmazonと、宇宙インターネットはまさに群雄割拠の様相を呈してきた。はたしてこのうち何社が生き残り、どのような勢力図になるのかはまだわからない。  しかし少なくとも、いくつもの企業が挑んでいることが示しているように、一度は潰えた宇宙インターネットという夢がようやくものになりつつあり、そしてデジタル・ディバイドの解消とビッグ・ビジネスの到来という、大きな未来をもたらそうとしていることは間違いない。 <文/鳥嶋真也> 宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)があるほか、月刊『軍事研究』誌などでも記事を執筆。 Webサイト: КОСМОГРАД Twitter: @Kosmograd_Info 【参考】 ・STARLINK MISSION | SpaceXStarlink Press KitElon Musk(@elonmusk)さん | Twitterからの返信付きツイートStarlink
宇宙開発評論家。宇宙作家クラブ会員。国内外の宇宙開発に関する取材、ニュース記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。 著書に『イーロン・マスク』(共著、洋泉社)があるほか、月刊『軍事研究』誌などでも記事を執筆。 Webサイト: КОСМОГРАД Twitter: @Kosmograd_Info
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