クレジットカードを渡されて放置される……高所得な港区の子どもが抱える問題

平均所得1000万円の港区に潜む格差

 東京都港区は、東京湾の西側に位置する人口総数が25万3639人(2018年1月1日時点)の自治体。知名度が高いTV局や広告代理店などといった一流企業が、汐留などのビジネス街を形成しています。六本木や赤坂、さらには高級住宅街として知られる白金も港区に位置します。  総務省の資料とみらめっこしてみると、港区の平均所得は1000万円を超えることが伺えます。  ブランド力により生まれた「港区女子」という言葉を、耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。実はそんな港区でも格差が激しい現状があり、住む子供が「生きづらさ」を抱えていました。

中学受験をするかしないかで経済格差を感じる子どもたち

 「港区には、格差があります。民間マンションと公営住宅のどちらに住んでいるかが大きな分かれ目ではないでしょうか。仕事をしていて感じることもしばしばです。ですが、子供たちは仲良くわいわいと遊んでいますよ」  そう話すのは、港区内にある保育室で働く女性職員。保育室とは待機児童を解消するため、港区独自の制度によって作られた子供を預けるための施設です。ここの保育室では、主に0~3歳児を預かっています。  しかし大きく変わってくるのは、小学生からでした。 「私立の小学校と公立の小学校では、中学受験をする生徒の数に差があり、公立学校に通う子供が自身の家庭が置かれている経済状況を感じたりもしますね」  都内の学校に通う二十代の男子学生の山口さん(仮名)はこう話します。彼は港区に生まれ育ち、同区内の小中学校・高校へと進学しました。  親の仕事の忙しさから抱える寂しさ。中学受験をする、しないで感じる経済格差。あらゆる要素が、子供を苦しめている港区。  東京都教育委員会が公表した23区内における公立小学校から公立中学校への進学率を低い順から見てみると、中央区が53%、文京区が54%、港区が59%とワースト3位にランクインしています。

東京都教育委員会・平成29年度公立学校統計調査報告書より筆者作成

 中央区や文京区と比べ、港区は1.5倍ほど平均年収がズバ抜けて高いです。(※)親の激務が原因で、子どもは一人で放っておかれることも。港区にて街頭取材を行っていると、耳を疑うような声を聞くことができました。 「親の仕事が忙しく、子供が両親の出張などの際にクレジットカードを渡されるケースがあります。親不在の中カードで食料を買うことを余儀なくされ、一人で食事をしていることを耳にしたことがあります」  こう話してくれたのは、港区内にて福祉支援を行っている団体の菅沼さん(仮名)。  一人での食事、孤食をする子供たち。このような事態は、彼らの自尊心の低下・肥満といったあらゆる問題を引き起こします。また、 家族でも本人以外の人物にクレジットカードの貸し借りを行うことは、クレジットカード会社における約款の違反行為にも繋がり兼ねません。  このような問題に対し、地域コミュニティを形成することで解決を目指しているのが、NPO法人みなと子ども食堂です。
次のページ
富裕層の多い港区で子ども食堂
1
2
3
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会