問題山積の被ばく労働、外国人労働者の受け入れは中止を

危険手当まで中抜きされる現状

 廃炉作業への外国人労働者の受け入れに当たっては、様々な懸念事項がある。そもそも被ばく労働では、賃金が中抜きされているという問題が指摘され続けてきた。  5月27日に開催された「外国人労働者と被ばく労働」の学習会で、朝日新聞社の青木美希記者は「多重下請構造で、中抜きが横行している。1万数千円の日給が5500円まで下がってしまうことがある。危険手当まで中抜きされることがわかっている」と話す。  また、外国人労働者が廃炉作業の危険性をきちんと理解できているのか、そもそも自分がどのような仕事をしているのか分かっているのかという問題もある。過去には、ベトナム人の男性が、そうとは知らずに除染作業に従事させられていたことがあった。  外国人労働問題に詳しい指宿昭一弁護士は、「技能実習生の多くは自分がどこで働いているのか、何の仕事をしているのか正確に理解していないことが多い。労働条件もわかっていない。そのような人たちに廃炉作業をさせるのか」と憤る。  ある支援団体では、相談を受けるとまずその実習生がどこで働いているのかを訊ねるという。自分がどこで働いているのはしっかりと理解している実習生は少なく、「日本で働いている」といった答えが返ってくることも珍しくない。働いている場所を正確に把握するため、最寄のコンビニで買い物をしてもらい、レシートを撮影して送ってもらうそうだ。 「登録支援機関」の制度にも問題がある。外国人労働者を雇う企業とは別に、登録支援機関が様々な支援を行うことになっている。しかし支援機関は、企業から委託を受けて、報酬を受け取っているため、「労働者がハラスメントや賃金の未払いといった問題を相談したときに、適切支援することができるのか」(指宿弁護士)という問題がある。

複数の原発で被ばく、責任の所在は

 福島第一での廃炉作業や九州電力玄海原発の定期検査を行い、急性骨髄性白血病を発症した男性がいる。2015年10月に労災認定を受け、2016年11月には、原子力損害賠償法に基づく慰謝料を求めて2社を提訴した。  複数の原発で被ばくした場合、電力各社は「どのように責任を分担するのか」。被ばく労働を考えるネットワークのなすびさんは、そう指摘する。問題が山積する現状では、危険な被ばく労働に外国人労働者を受け入れるべきではないだろう。 <取材・文/HBO編集部>
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