photo by 蟹・甘党 via Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)
デサントと伊藤忠が全面対決、敵対的TOBに発展――。さまざまなメディアで、過激な表現が躍った。
今年1月31日、伊藤忠商事がスポーツウエア大手デサントに対しTOB(株式の公開買い付け)をすると発表。続いて3月20日には、中堅印刷会社の廣済堂に、旧村上ファンド系レノがTOBを仕掛けた。今年に入ってから「敵対的」と呼ばれる企業買収やTOBが立て続けに起きている。
’00年、村上ファンドが昭栄にTOBを仕掛けたのが、日本初の本格的な敵対的TOBの事例とされている。結果は持ち合い株主に阻まれ失敗したが、その後も米投資会社サーベラスが西武ホールディングスの筆頭株主になったり、米ヘッジファンドのスティール・パートナーズが明星食品にTOBをしたところ、日清食品がホワイトナイト(友好的買収者)として出現し買収を阻止するなど、これまでも敵対的な買収は多数あった。
今、相次いで起きている敵対的な買収だが、エコノミストの永濱利廣氏によると、「M&A(企業の買収・合併)件数は過去最高、TOBも増加傾向にある」という。
「日本企業の海外進出、AIやIoTなどのベンチャー投資、業界再編、事業承継などがエンジンとなり、レコフデータの調べでは、’18年のM&Aは3850件、総額40兆円と過去最高を記録。また、TOBは国内上場企業の買収が活発だった’06~’07年が突出し、リーマンショックで減少。しかしこの数年、ベンチャー投資などをはじめ、再び活性化してきています」
今回、デサントに対する伊藤忠のTOBは「敵対的」と報道された。しかし、一口に「敵対的」といっても、さまざまなケースがあるという。早稲田大学大学院経営管理研究科教授・鈴木一功氏はこう説明する。
「株を買われる側の企業の経営陣が反対意見を表明するのが、敵対的の定義です。ではそれ以外のすべてが“友好的”かというとそうではなく、事前に相談や同意がないケースや、経営陣にとっては好ましくないケースなどもあります」
広義の“敵対的”買収やTOBは思いのほか多く、「今後も増加するだろう」と口を揃える。