店内をざっと見回してみると、座席数はあまり多くない。気さくなウェイターに話を聞くと、
「最近はおかげさまで予約でいっぱいです」
というほどだ。顧客の中心はタイ人が圧倒的に多く、次に白人や中国人、最近は日本人もブログで紹介しているなどで増えてきたという。最初こそ誰もが興味本位だが、食事が終わるころにはみな昆虫食への印象が変わっているとウェイターは話した。
店内のふたりがけのテーブル席。理科室の雰囲気を持つ棚がある
ラフレシアは隣のマレーシアが有名
店内の雰囲気はアンティーク調のテーブルなどがありつつ、随所に昆虫のオブジェなどが見られる。本当の虫嫌いにはおそらくその時点でアウトかもしれない。天井からはかつて日本のテレビで人食い花などと紹介されたラフレシアのオブジェもぶら下がる。食虫植物を模したそのオブジェは、筆者からすると80年代のホラー映画(?)である「リトルショップ・オブ・ホラーズ」を彷彿する。
ブラウニーに載ったコオロギは甘くて昆虫を食べている感じがしない
ホタテの料理をアップにすると、竹虫が載っていることがわかる
生牡蠣も新鮮だった。アリのさなぎの味がわからなかった
さて、今回の食事で5品ほど注文した。デザートとドリンク、それから消費税とサービス料を含め、会計はおよそ2000バーツ(約7000円)だった。この金額は飲食店としてはそれなりに高級な部類に入るだろう。1品あたり200~300バーツするので、バンコクの中心地にある日本人経営の居酒屋よりも高いと見ていい。
同行した筆者の妻は昆虫食に慣れた東北地方出身者で、感想を聞くと「これまでになかった昆虫食で感動した」とは言いつつも、
「虫でこの料金は高い。ありえない」
という本音もあった。
そう考えると、いわゆる富裕層まではいかなくても、アッパーマス層(タイのこの層の定義は不明だが・・・)のようなそこそこに金銭的余裕のある層をこのレストランはターゲットにしていると見られる。本来の昆虫食に慣れた人たちはいったん置いておき、上の層から昆虫食を見直してもらおうという考えが見られる。
実際、この層が購買力も高く、同時にSNSなどを巧みに利用する術を持っているので、口コミで昆虫食を広げる力もある。ほかの人気昆虫レストランも客層が富裕層や芸能関係者だという。今後の数年でタイの昆虫食が大きく変わっていくことだろう。バンコクに来たら、タイ料理だけでなくぜひ昆虫食も楽しんでもらいたい。
<取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:
@NatureNENEAM)>
たかだたねおみ●タイ在住のライター。近著『
バンコクアソビ』(イースト・プレス)