ホタテの料理。海鮮も新鮮でおいしい
海外旅行というと、大きな楽しみのひとつに食事が挙げられるだろう。日本では味わえない現地での美食を楽しむことを目的にする人も少なくない。しかし、文化の違いなどから日本ではあまり使われない食材があるなど、場合によってはアグレッシブな観光になることもある。
そんな人がしばしばトライするのが、「昆虫食」だ。
日本でもイナゴや蜂の子など以外にも、徐々に広まりつつある「昆虫食」。世界的に見ても多くの地域で昆虫が食され、世界的には1000を超える種類の虫が食用になるという。
東南アジアでも昆虫食は珍しくなく、タイにおいても昆虫食は一般的だ。ただしそれは、バンコクではなく東北地方が中心になる。タイ東北地方や北部は海がない。特に東北地方は山も少ないので野生動物もそれほど多くないため、重要なタンパク源として昆虫が食べられてきた。バンコクにおいても昆虫を売る屋台をよく見かけるが、買っていくのはやはり東北地方出身者ばかりだ。彼らからすれば食べ慣れた食材であるし、軽食としても手軽なので屋台で見かければ思わず買ってしまうようである。
バンコクの屋台で売られる昆虫は揚げものが中心だ
バンコクなど都会育ちの人々からすると、昆虫は救荒食物、あるいは農業しか産業がなく貧困層の地域というイメージが東北にあることから、低所得者層の食事というネガティブな印象が先行している。この辺は、日本人など昆虫を食べ慣れていない人からしてもやはり虫の外観に好感を持てない人も少なくないだろう。
しかし、近年では貴重なタンパク源として注目されるようになっているのはタイも日本も同様で、バンコクにおける昆虫食に対する感情に徐々に変化が出てきた。高級レストランなどで昆虫が使われるようになっているのだ。今回は、そんなバンコクで人気のある昆虫食を推進するレストランのひとつに行ってみた。
「INSECTS IN THE BACKYARD」の外観にも昆虫の足が飾られる
昆虫食を勧めている人気レストランはバンコクにすでに数店ある。今回はその中で一、二を争う人気店「
INSECTS IN THE BACKYARD」に行ってみた。
バンコクは今、中心地から見て東へと開発が進んでいるが、実はチャオプラヤ河の西岸も注目されるエリアになっている。不動産開発だけでなく、観光スポットなどが新しくできあがっており、電車などの交通網も整備されつつある。
そんな地域にある「チャーン・チュイ」というナイトマーケットの中に「INSECTS IN THE BACKYARD」がある。このマーケットは中央に航空機を置いた新しいスポットで、このレストラン以外にもタイ人向けの価格帯で設定された飲食店がたくさん並んでいる。
「チャーン・チュイ」はバンコクの西側にある新しいナイトマーケット。一部の店は昼間も営業する
巨大な飛行機が置かれ、夜は23時まで賑わう「チャーン・チュイ」
「INSECTS IN THE BACKYARD」は店名通り、裏庭の昆虫をコンセプトにしている。タイの昆虫食は、たとえばカンボジアなどと比較しても食する昆虫の種類はそれほど多くない。このレストランでも中心になるのが、コオロギや、カイモッデーン(赤アリの卵)とタイ人が呼ぶアリのさなぎ、ラグビーボールのような形の蛾のさなぎ、竹の中にいる芋虫である竹虫だ。
タイの昆虫食は基本的には揚げているものばかりだ。屋台などではどんな油を使っているかわからない。作り置きした虫のから揚げに、ときどき塩水をスプレーするので、味は油と塩の味といった感じで、食感を楽しむものになる。しかし、ときにこういった屋台だと食中毒を起こすこともあるので、なおのことバンコク人は敬遠したがる。
この「INSECTS IN THE BACKYARD」においては、タイの有名レストランで修行をしてきたティティワット氏がメインシェフとなっており、昆虫でさえも品のよさを感じる。この店の昆虫も多くは揚げものとして調理されているので食べやすいし、なによりパスタや肉・魚料理そのものがおいしい。どうしても昆虫が苦手な人には虫を使っていないメニューも用意される。
これらの料理そのもののレベルが高いため、「INSECTS IN THE BACKYARD」ならすんなりと昆虫食を受け入れられるだろう。料理に合わせて昆虫の種類も厳選されているし、デザートに添えられる昆虫はちゃんと甘く味つけされていて、きめ細かな仕事が施されている。