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2019年5月16日、フェイスブックはブログで
フェイスブックとインスタグラムの265のアカウントとページを削除したことを発表した(参照:
Removing Coordinated Inauthentic Behavior From Israel)。
翌17日には、この発表を受け、AP通信社ニュースが『
Facebook busts Israel-based campaign to disrupt elections』という記事を発表した。同記事内では本連載でお馴染みのデジタル・フォレンジックラボのコメントも紹介されている。デジタル・フォレンジックラボはアメリカのシンクタンク大西洋評議会の組織で、ネット世論操作を中心に調査研究を行っている。
削除対象となったアカウントはフェイクであり、現地の人間あるいは地方新聞を名乗り、
政治家からのリークだというフェイクニュースなどを広めていた。取り上げるテーマは選挙や候補者に関するものが多かった。ターゲットになった地域はナイジェリア、セネガル、トーゴ、アンゴラ、ニジェール、チュニジア、マリ、ガーナといった
アフリカの国々、ラテンアメリカ、東南アジア、少なくとも
13カ国がターゲットになっていた。そして、実行したのは
イスラエルのアルキメデスグループという私企業だ。なお、13カ国にはフェイスブックの発表にはなかったが、のちにデジタル・フォレンジックラボで確認されたものも含めた。
地元紙やファクトチェック組織を装ってフェイクニュースを流す
フェイスブックでは65アカウント、161ページ、23グループ、12イベント。インスタグラムでは4アカウントが対象になった。約280万アカウントがひとつかそれ以上のページをフォローし、5,500アカウントが少なくともひとつのグループに参加し、920アカウントがひとつ以上のインスタグラムのアカウントをフォローしていた。およそ8,850万円(US$812,000)の広告出稿があった。最初の広告は2012年12月で最新の広告は2019年4月。9つのイベントがこれらのページで開催され、2,900人が少なくともひとつに関心を示した。
多くの投稿は地元の政治家を支援するか、攻撃するものが多かった。ページを作り、地方紙やファクトチェック組織に見せかけて、当該政治家に関するリーク情報を掲載していた。これらのページは地元の人間が作ったような体裁だったが、国外で運営されていたことがわかった。
この連載でも『
急成長するアフリカの覇権を巡り、しのぎを削る中露。経済支援・ネット世論操作でも』で、アフリカに蔓延しているネット世論操作について概観した。そこでネット世論操作が行われており、
ケンブリッジ・アナリティカの関与を指摘した。しかしイスラエルの私企業が食指を伸ばしていたことは今回初めて知った。