HBO編集部:「呂布さんがMCバトルに興味を持ったのは
‘05年のUMBを観てからということですが、当時のバトルは今のように盛り上がってはいなかったわけですよね」
呂布:「そうでしたけど、当時はバトルが専門、メインというラッパーはいなくて、音源が売れている人も『面白そうだから』と出ていましたし、今よりスタイルも多種多様でした。
FORKさんが一回スタイルを固めるまでは本当にいろんな人がいたんですよ。賞金額も
UMBの100万円がずば抜けて大きかっただけで、他は優勝しても5万、3万程度の世界でした。だから僕も賞金を稼ぐ目的よりも、本当に
腕試しで出ている感覚でしたね」
正社員:「UMBが賞金100万円になったのも‘10年からじゃないですかね。たしか
鎮座DOPENESSさんが優勝した‘09年が50万円で、
FORKさんが優勝した年はたぶん30とか。
カルデラビスタ(‘05年優勝)は15万だと言ってました。それと比べると今のMCバトルは賞金額だけでも出る価値があるし、ほかにも出場するメリットが多い。若いコは活躍すれば名前が売れるし、チヤホヤされてモテることもある。あと、
観客が集まる大きな大会なら、賞金がもらえなくても物販で10万、20万とかの売り上げがある人もいる。でも
‘10年ごろのバトルって、そのメリットが全部なかったんですよ」
呂布:「なかったし、
バトルが終わったあとにしばかれるようなこともあったし」
正社員:「今考えると『
何でみんなMCバトルに出てたの?』って状況ですよね」
呂布:「今は出場しないような
本当にコワい人が出ていて、
『バトルでは無礼講ね』という認識も浸透してなかったしね。『俺がこんなガキに負けるわけねえだろ!』みたいな不良に勝ったりすると、終わったあとにヤバい空気になることも全然あって。それくらい会場の空気はピリピリしてたし、
お金じゃなくてプライドのために戦ってたね」
正社員:「当時は
ヒップホップが金になるなんて誰も思ってなかったですからね」
呂布:「会場でCDも売れないし配信もないし、
ごく一部の人を除いて全Bボーイが貧乏みたいな時代だったからね。何もかもが全部違った」
正社員:「バトルで活躍しても話題になるのはその場のみで、
誰も映像も撮ってないから、『あいつが優勝した』という評判もごく一部で広まるくらいでしたよね」
呂布:「そんな中でも唯一名前を売る機会になったのが、
UMBで地方の代表になること。全然たいしたことないヤツも代表になってましたけど、本戦に出たあとの一年はいろいろなイベントに呼ばれる感じでした」