今回の自民党・風営法議連の提言により、法律が覆る訳ではない。法は法、提言は提言。長期的な視野でみれば、今後のパチンコ業界に関わる法整備にも一定の影響を及ぼすかもしれないが、即効性があるものではない。
しかし今回の提言により、
パチンコ業界が得たものは決して小さくはない。
まず問題の発端であった、規則改正による新規則機の市場投入が容易になるのかという問題については、5月以降の保通協適合率を見てみなければわからないが、少なくとも「なぜ不合格になったのか」という点がクリアにされれば自ずと適合率も向上するはずである。
またギャンブル等依存症対策推進基本計画において、強く要請されていたパチンコホール内のATMの撤去についても、非撤去をも選択肢として業界が対策を講じる十分な時間的猶予も与えられた。
しかし何よりも今回の提言によりパチンコ業界が得たものは、
政官民の三すくみの関係性を構築出来た事であろう。簡単に言えばじゃんけんの論理である。
今までは、特にギャンブル等依存症対策が政府や国会で議論され始めてからは、
パチンコ業界は所管する警察庁の指導を無条件で受け入れざると得なかった。時にそれが業界の現状にそぐわないものであっても、行政の指導であれば「NO」という判断を下すことは出来なかった。圧倒的な上下関係。元来、官と民の関係性とはそういうものではあるが。
しかし、
官は政に弱い。官僚とは、政治の決定を世の中に落とし込む事がすべてであり、政治が右と言えば右に忖度し、左と言えば左に舵を切るのが官僚の性でもあり矜持でもある。
一方、政は民に甘い。官は産業を管理するが、政は産業を育成するという視点の差もあるが、生々しい話をすれば、
民は政の票という命運を握っていることがその下地にある。選挙が近くなればなるほど、政は民に、よく言えば面倒見がよくなるし、悪く言えば甘言を弄す。
政官民のじゃんけんの構図。
今回の自民党・風営法議連の提言と、そこに至るプロセスがパチンコ業界にもたらしたものは、その内容以上に大きいのだ。
ただ、何かを新しく得るという事は相応の対価も求められる。まして政治の力をもって得たものである。その対価は決して安くはないはずだ。
<文・安達 夕
@yuu_adachi>