釜ヶ崎から貧困層が排除される? あいりん総合センター閉鎖で進む再開発

 日本で最大級の日雇い労働者の街である釜ヶ崎。同地で、労働者が仕事を求めて集まる「あいりん総合センター」が3月末に閉鎖された。一部の労働者や支援者は、建物内に残って抵抗していたが、警察と行政は4月24日、労働者や支援者らを退去させ、センターを完全に閉鎖した。  橋下徹氏は「あいりん労働センターを南半分に縮小し、センター北側と新今宮駅周辺を活性化させる」と明言しており(※1)、閉鎖をてこに地域の再開発が進むと考えられる。しかし再開発が進めば、日雇い労働者や野宿者が町から排除される危険性がある。

あいりん総合センターの閉鎖で「居場所」としての機能が失われる

「あいりん総合センター」は、1970年に設置されて以来、労働者が職を探し、身を寄せる場所として機能してきた。釜ヶ崎地域合同労働組合の稲垣浩委員長によると、センター内には洗濯をする場所や食堂、売店、トイレや娯楽室があり、労働者たちが昼間に横になれる場所もあったという。しかし耐震性が不十分であることが判明し、3月31日に閉鎖された。

新設された西成労働福祉センター

 センターが担っていた機能は、何か所かに分けて移転された。大阪府が管轄する「西成労働福祉センター」は、センター横を走る南海高野線の高架下に新設された。厚生労働省の大阪労働局が管轄する「あいりん労働公共職業安定所」(職安)も高架下の別の場所に移設された。

新萩の森

 隣接する萩之茶屋小学校跡地は「新萩の森」と名付けられ、テントやベンチが設置されている。  しかし新萩の森に設置されたテントはとても簡素なもので、風雨をしのぐのは難しそうだ。センター内にあった食堂の代替施設もない。釜ヶ崎日雇労働組合の山中秀俊委員長は、「耐震性が不十分である以上、センターの建て替えは避けられません。しかしそれまでの間、センターが担ってきた『居場所機能』が失われないように、代替施設を拡充してほしい。労働者が横になって体を休める場所も足りません」と話す。

背景にある「西成特区構想」と「大阪都構想」

 橋下徹・大阪市長(当時)は2012年1月に「西成を変えることが大阪を変える第一歩」として「西成特区構想」を打ち出した。野宿者が多く、結核に罹患している人が多いといった西成区の抱える課題を解決し、町の活性化を図るというものだ。あいりん総合センターの建て替えは、この構想の中に位置づけられている。  大阪特区構想でも、西成区は重要な位置を占める。同構想では、西成区と西区、中央区、大正区、浪速区、住之江区、住吉区が一つの特別区になり、あいりん総合センターの北部にある西成区役所が中央区役所になる予定だ。  産経新聞の2015年4月の報道によると、「都構想の制度設計を担った大阪府市大都市局は新中央区の本庁舎には交通利便性などから浪速区役所が最適としていたが、維新は政治判断から西成区役所に決め、官庁街を整備する青写真を描いている」という。
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