相次ぐ維新議員の失言。背景に「党や支持者による甘やかし」

丸山穂高議員

衆議院インターネット審議中継より

 日本維新の会に所属していた丸山穂高衆院議員の“失言”が報じられた。丸山議員は5月11日、酒に酔った状態で「戦争でこの島を取り返すのは賛成ですか、反対ですか」と国後島の元島民に質問。さらに「戦争しないと、どうしようもなくないですか」と発言したという。  維新の松井一郎代表は14日、丸山議員を除名処分にする意向を示した。その後、丸山議員本人が離党届を提出している。  維新の会に所属する議員の失言が問題になるのはこれが初めてではない。過去には足立康史衆議院議員や松井代表も失言が報じられてきた。なぜこのようなことになるのか。

丸山議員、過去にも酔って一般男性とトラブル

 丸山議員は過去にもトラブルを起こしている。2015年12月、酒に酔って、東京都内の路上で一般の男性と口論になり、手を噛んだという。翌2016年1月には、ツイッターに「あらゆるトラブルを予防するため、今後の議員在職中において公私一切酒を口に致しません」と投稿している。それにもかかわらず、今回も飲酒し、失言したことになる。  なぜこのようなことが起きるのか。維新の会の取材を続け、6月1日に『緊急検証 大阪市がなくなる』(140B)を出版予定のジャーナリスト・吉富有治さんは、「実は維新の問題は失言よりも、政府活動費の不正使用が多い」と前置きしつつ、「丸山議員は東京大学を卒業し、経済産業省に入省したエリート。少々うぬぼれていたのではないか」と指摘する。 「うぬぼれから自己が肥大化し、自分は偉く周囲の人が馬鹿に見えるのではないでしょうか。 今回の失言について、ツイッターでも謝罪していましたが、リプライには『応援しています』『頑張ってください』というものばかり。維新の支持者は『あの議員は頑張っている』といった情緒的な理由で支持することが多く、一部の冷静な人を除いて政策に注文をつけ、また暴言を諌めることは少ない。その甘やかしの結果として丸山議員を助長させたのでしょう。以前も酒に酔って一般人に噛みついていましたが、酒癖も悪いのだと思います」(吉富氏)  公式サイトのプロフィールには、資格欄に剣道2段と書かれている。剣道2段は普通に部活をやっている中学生なら取れる資格だ。うぬぼれるほど優秀な人物であるなら、もっと取得が難しい資格は持っていないのだろうか。

国会議員に課せられている憲法尊重擁護義務違反?

 しかも丸山議員の失言は、憲法第99条で国会議員に課されている「憲法尊重擁護義務」に違反する疑いがあると指摘する。 「言うまでもなく、憲法9条では『国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する』と定められています。武力で北方領土を奪回しようという発言は、それを無視するものです。さらに憲法99条では国務大臣や議員、すべての公務員には憲法尊重擁護の義務を課しています。丸山議員はこの義務を軽んじたと見られても仕方がなく、あの発言そのものが憲法違反の疑いさえあるものです。 もはや議員としての資質がないといっていいでしょう。維新の会を離れましたが、他の党派だろうと無所属だろうと国会議員になるだけの資質がありません。改憲をしようと考えるのは自由ですが、現行の憲法がある以上、それを蔑ろにしてはいけないのです」(吉富氏)  丸山議員の発言はロシアでも報じられ、上院のコサチョフ国際問題委員長は5月13日、「もし(発言が)本当なら、日ロ関係にとって最低だ。そうした発言をするのは、問題の本質的な解決を望まない人物だけだ」と批判したという。朝日新聞によると、ロシア国内で大きな反発は起きていないというが、日ロ関係に悪影響を及ぼしたことは間違いないだろう。 「武力で領土問題を解決しようというのは近代民主主義国家にはあるまじきことです。あんな発言をしたら、ロシアや国際世論がどんな反応をするのかわからなかったのでしょうか。何より北方領土の島民の人たちが武力による解決なんて望んでいませんよ」(吉富氏)
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足立康史議員は炎上商法?
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緊急検証 大阪市がなくなる

不可解な大阪W選挙。問われたのは有権者の冷静な判断。大阪維新 vs 自民党大阪の対立構図。
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