グアイドーやコロンビアのドゥケ政権に対する失望の声
コロンビアで、これ以上自分たちの立場に発展する可能性はないとみたイスマリーの場合は、ペルーを経由してチリまで4日かけて移動したという。ベネズエラの軍隊から抜け出すことは裏切り者と見なされるのを承知しての実行だった。それもグアイドーが暫定大統領として自称したことを観て希望の光が降り注いだと感じたからだという。
チリから家族にお金を送って先ず父親を呼びよせた。彼の妻はコロンビア人ということで子供を連れてのコロンビアへの入国は容易だった。父親はコロンビアに滞在中はチリ大使館やその他の公的機関を訪問して援助を懇願したが今のところは成果はないそうだ。彼は家族全員をチリに呼び寄せることにしているそうだ。「グアイドーには失望している。今の私の家族は成り行きに任せているだけだ」と述べた。(参照:「
La Tercera」)
ベネズエラの軍人がチリに向かう理由には彼らの親戚がチリにいるという理由とは別に、チリのピニェラ大統領がグアイドー暫定大統領の強力な支持者であり、ベネズエラの軍人を受け入れる用意があることを表明したからだという。
一方、コロンビアのドゥケ大統領に対しては、ベネズエラの軍人は失望感を抱いているという。というのも、コロンビア政府からククタに脱出して来たベネズエラの軍人の為の具体的プランがないからだ。
コロンビアはベネズエラと国境を接している関係から脱出したベネズエラの軍人を積極的に支援するようになると、まだマドゥロ大統領が政権を維持しているベネズエラとデリケートな関係になりかねないことをコロンビア政府は懸念しているのである。(参照:「
La Tercera」)
しかし、コロンビア政府のこの判断についても昨年8月に任期満了で大統領の職務を終えたサントス前大統領であれば、また別の対応をしていた可能性は十分にある。サントスは外交手腕は非常に巧みであった。ドゥケは大統領になる前は金融業界に籍を置いていた人物で政界への進出は初めての経験である。
コロンビアに脱出したベネズエラの軍人は3か月も何もできないという状態から軍人としての規律が乱れるものもいるという。泥酔して宿泊しているホテルで乱暴行為に走った例もあるという。また、4月20日にはテロに襲われたと偽った通報もあった。この場合はそれに関与したベネズエラの軍人は避難民としての特権を失うことになる。またネットを通して覆面姿でグアイドー暫定大統領に経済的援助を要求するという事態も起きた。(参照:「
Infobae」)
現状では、マドゥロ大統領を追放してグアイドー暫定大統領が政権を掌握するようになる可能性は全く立っていない。コロンビアに逃亡したベネズエラの軍人にとって希望をこれからも抱き続けるのは容易ではない。
<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営から現在は貿易コンサルタントに転身