中国と国境を接する新義州青年駅
中国税関が発表した中朝貿易統計によれば、2018年の中朝貿易総額は、10年前水準の24億3000ドル(約2570億円・前年比51.2%減)と激減している。
以前触れたように、中朝国境エリアで密貿易なども横行しているため、中国政府発表の数値には信憑性が微妙という向きもあるが、表向きは中国政府は繰り返し責任ある大国として国連制裁に従い着実に履行していることをアピールしている。
公的な中朝貿易は縮小する一方で、中朝指導者の関係は劇的に改善し、交流を深める状態になっている。それも影響してか、一時期あまり聞かれなかった中朝交易の話がちらほら聞こえてくるようになった。
今、盛り上がっている交易の1つが「かつら」ビジネスである。3年ほど前から始めたという中国朝鮮族の女性経営者の薛氏は、月産数百個のかつらを北朝鮮で製造し、中国へハンドキャリーで持ち込み中国国内だけではなく、東南アジアや欧州へも輸出しているという。
主に生産しているかつらは、いわゆる全かつら(全頭かつら・フルウィッグ)と呼ばれるものだ。アジア人向けだけでなく、白人や黒人向けも作っており非常に好評だと胸を張る。しかも、かつらは国際制裁の対象外なので問題ないと薛氏は主張するも、後に説明するが実際は国連制裁に抵触している可能性は高いと思われる。
薛氏がこのビジネスを始めたのは10年ほど前からかつらビジネスをやっている朝鮮族男性を親戚から紹介され、そのビジネスモデルを習ったためだ。この男性は月産数千個を委託生産しているらしく、かつら界のカリスマと呼ばれている。
製造されている実際のかつらを触った人に聞くと、薛氏は人工毛だと主張するが、人毛かと思う感触で驚いたという。今後、もっと生産数を増やしたいと意気込んでいるが、ハンドキャリーとはいえ本当にこれだけの量を旅具通関(手荷物扱いの簡易通関)で通せるのであろうか。