さらに関係者へ話を聞いていくと、これも一時期、聞かなかった布生地ビジネスが再び活気づいていることが分かった。北朝鮮は、縫製技術が高いことで知られる。日本の大手アパレルメーカーが下請けを通して日本向けスーツの袖口などが北朝鮮で縫製されていたいことは有名な話だ。
北朝鮮で刺繍されて生地を使い韓国で販売されたポーチ
現在、監視が厳しくなり日本向けの布や生地はないようだが、昨年の春から韓国向けが増えているという。ある別の朝鮮族経営者は、中国から生地を北朝鮮へ持ち込み、韓国向けのチマチョゴリの生地を手縫いで生産し、再び中国へ戻し、韓国へ輸出し、チマチョゴリへ加工し、「Made in Korea」、韓国製として韓国人向けに国内販売している。
北朝鮮の工場で担当しているのは、布の大まかな裁断と朝鮮半島伝統の刺繍「ポジャギ」を施し、出荷している。この段階ではまだ製品ではなくただの素材、布なので、国連制裁をすり抜けられるという。そして、最終的には韓国製へと姿を変えて韓国人が買っていくという流れだ。しかし、「国際連合安全保障理事会決議第2375号」には、輸入禁止対象に、繊維製品(生地および部分的にまたは完全に完成された衣類を含む)となっており、生地のみでも抵触すると思われる。
裁断や刺繍をしているのは、主に北朝鮮人の普通の主婦たちで、訓練し、韓国人が好むデザインレベルまで品質を向上させたという。
工場は住宅街の一室を改装した簡素なものという
「韓国人と(北)朝鮮人のポジャギの価値観1つとってもまったく違うので、当初は、韓国人に“ダサい”と大不評でした。そこで韓国人の好みをヒアリングして改良を重ねました。朝鮮の女性たちは手先が器用でよく働くので、1年ほどで韓国人が喜ぶような『韓国的な』製品を作ることができるようなりました」(朝鮮族経営者)
チマチョゴリ以外にも刺繍を取り入れたポーチやハンドバックのような製品の生地も北朝鮮で作られているようだ。韓国人はこの刺繍や布が北朝鮮で作られたものを知らずに韓国製と思って使っているのだ。